020
フォルックは助かったようだ。
安堵してアルスがホッと息をついていると、食獣植物の蔓が自分の足元を狙ってくる。
急いで地を蹴りその場から逃げれば、次から次に食獣植物の蔓と根が襲ってくる。ベルトルもフォルックも大きく抵抗してくるものだから、ターゲットを自分に絞ってきたようだ。
持っているブーメランで蔓や根を薙ぎ払いながら、必死で考える。
自分は【マナ】を使えない。
このままではラージャにも迷惑が掛かるし、フォルックや不本意ながらもベルトルに迷惑が掛かる。自分だけお荷物になる、なんて冗談じゃない。
だけど、これからどうする?
自分の持っているブーメランなんて、食獣植物にとってはただの玩具も同然。倒せるなんて限りなくゼロに近い。
「うわっとっ! アッブネェ!」
『アルス!』
「大丈夫だって。ただ、こいつ等の攻撃、マジしつこいって!」
『やっぱ、初級魔法使えって! 今度から使わないようすりゃいいだろ?!』
それは絶対嫌だった。
昨日、ラージャが初級魔法を体内に取り込んだせいで一晩中苦しんでいたではないか。そんなこと、もう二度とさせたくない。
頑なに拒むアルスにラージャが「来る!」と声を張った。
四方八方から食獣植物の蔓と根、そして小さなハエトリグサ似の葉が襲ってくる。
紙一重で避けながら、アルスは必死でどうすれば良いか考える。
(一か八か、【マナ】を試してみるか?)
自分の出した案に却下をする。また失敗するだろう。時間の無駄だ。
小さなハエトリグサ似の葉が、ラージャに消化液を掛けてようと閉じている葉を開いた。ラージャは気付いていないようだ。アルスは迷うことなく、ラージャのところに走った。
消化液が掛かる前にラージャを庇うように抱き締めて、その場から転がるように逃げた。
「アツツツツーッ! ゲッ、服が溶けてやんの! 結構気に入ってたんだぞ! これ!」
『アルスッ!』
「腕にちょっと掛かっただけだって。心配すんな」
左腕を軽く振りながら、アルスはラージャを抱いたまま駆け出す。
ラージャはアルスの腕から抜け出し、アルスの隣に並ぶよう飛びながら意見する。
『初級魔法が使えないなら、【マナ】使ってみろよ』
「それは考えた。けど、俺じゃッ……ゲッ! なんか数多くなってないか?!」
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