019
なのに、なのにッ! 自分は食獣植物に食べられたくないと自分のことばっかり。情けない。凄く情けない。何の為に自分はフォルックと一緒にいるのだろうか。
恐くても、今、此処から逃げたら自分は一生後悔する。
ナーガは小さなハエトリグサ似の葉をキッと睨み、恐くないぞとばかりに突進して小さなハエトリグサ似の葉を振り払うとフォルックを追った。
『フォルック!』
「頭に血が上る! イタタタターッ!」
『フォルックー!』
「……え? な、ナーガッ!」
『早く【マナ】を使うぎゃ!』
臆病者のナーガが自分を追って来てくれた。
フォルックは驚きを隠せなかったが、素早くナーガの言葉を理解するとフォルックは呪文のスペルを唱え始める。フォルックの【マナ】を受け取ったナーガの身体は青いオーラに包まれた。
自分の魔力【ドラ・マナ】と混同させ、フォルックの右足首を捕らえている蔓に氷の息吹を吹きかける。
蔓が凍って動きが鈍くなる。
その隙にフォルックが暴れて蔓から逃れようとする。
「コノッ、このっ、あ! 取れたぁああああ?!」
『ぎゃぁあああ! フォルックー!』
蔓から逃れられたものの、そのまま身体が重力に従って落ちてしまう。
背中から地面に叩き付けられ、フォルックは呼吸がデキず咳き込んでしまった。
心配してナーガがフォルックのもとに舞い寄った。
『大丈夫だぎゃー? フォルック』
「ゲッホゲホ、い、痛かった……でも、助かった。アリガト。ナーガ」
『そんなことッ……直ぐ助けてあげられなくて、ごめんだぎゃ』
「いいよ。恐いもんね。僕も恐いし足竦むし」
ナーガと一緒だよ。
フォルックが涙目になりながらも微笑してきた。ナーガもつられて表情を和らげる。
しかし、目の前に小さなハエトリグサ似の葉が現れフォルックとナーガは驚いて真っ青な顔をした。
慌ててフォルックはナーガに【マナ】を送る。
【マナ】を受け取ったナーガは大きく息を吐いて、小さなハエトリグサ似の葉を凍らせる。
真っ白に凍ってしまった小さなハエトリグサ似の葉から急いで逃げるフォルックとナーガは、どうにか戦っているベルトルを見習うように参戦した。
「食獣植物を倒さないと、食べられちゃうもんねッ。こ、恐いけど、頑張ろう!」
『が、がががが頑張ろうだぎゃ!』
境遇はみんな一緒なのだ。食べられるなんて冗談じゃない。
とにかく、ベルトルを見習って自分も戦わなければ。フォルックの言葉にナーガは小さく頷いて、食獣植物を見据えた。
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