017
戦い始めたベルトルに対し、フォルックとアルスは未だパートナードラゴンと逃げる他術が無かった。
ラージャは小さなハエトリグサ似の葉が掛けてくる消化液から、アルスを守る為にシールドを張りつつ意見した。
『アルス。逃げてばっかりじゃダメだ。戦うおうぜッ。初級魔法使えよ!』
「ダメだ。それを使ったら、お前、身体壊すだろ」
『そンなこと言ってる場合かよ! 今のこと心配しろって!』
頑なに初級魔法を使うことを拒むアルスに、ラージャが怒鳴り声を上げた。
このままでは食獣植物の餌食になる。
だったら、昨日やったように初級魔法を自分に向けて食獣植物と戦った方が断然良いに決まっている。しかし、アルスは「ダメだ」と拒む。
『このッ、馬鹿ちん! 状況を見ろって! お前、このまま食獣植物の餌食になりたいのかよ!』
「ヤダね。けど、お前の体調を崩させるのもゴメンだ」
『だぁぁあ! じゃあ、お前はどーしたいんだよ! アルス!』
「決まってるだろ! お前と一緒に食獣植物と戦うんだよ! 【マナ】使うことや初級魔法を使うことだけが、一緒に戦うじゃないだろ?! 俺は何もデキねぇで、ただお前に守られるだけなんて嫌だ! お前と一緒に戦いたい!」
ジッとラージャを見据えてアルスが言い切った。
不意打ちを喰らったラージャは、目を丸くしてしまう。そしてフッと笑って「カッコつけ」と悪態付いた。
『そーゆー台詞は【マナ】使えるようになってから言えよ』
「うっせーな」
『けど、さすが俺ちゃまの主人だぜ。そう言われると俄然ヤル気でる』
「主人じゃない」
『ん?』
「パートナーだろ?」
言ってやったとばかりにアルスが笑った。ラージャが確かにと笑って、蜥蜴のような舌をチロチロと出した。
食獣植物がまた攻撃を仕掛けてくる。
アルスは“変態ドラゴン対策七つ道具”の内の一つ、ブーメランを取り出すと根に向かって投げた。
ダメージは全く無いが薙ぎ払うことぐらいはデキる。「上出来」戻ってくるブーメランをキャッチして、アルスが口端をつり上げる。
『で? これから、どー戦うんだ?』
「そうだな。取り敢えず、逃げながら考えるッ!」
『あーあーあー。こういうところも、さすが俺ちゃまのパートナーだぜ。ソンケーする』
「うっせー! お前も考えろって!」
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