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006



 アルスとベルトル、そしてフォルックの間に妙な空気が流れる。
 重々しい空気かと思えばそうでもなく、痛々しい空気ともいえない妙な空気が流れた。

 アルスとベルトルは視線を合わそうとしないし、2人の遣り取りを聞いていたフォルックも口を出すことがデキナイ。何を言えばイイのかも分からない。

 誰も喋らない為に静寂が訪れた。


 どうにかこの空気を散らさなければ。
 

 フォルックがそう思っていたその時、微かに声が聞こえた。
 何の声かは、誰の声かは言わずとも分かる。2人も声を聞き取ったらしい。聞き覚えのある声に、思わず口元を引き攣らせた。
 声は次第に大きくなる。こちらに向かっているようだ。3人がそっと教室のドアに身を隠しながら、ドアを少しだけその隙間から廊下を覗き込む。



「いやぁ、愉快愉快じゃ! あの若造達は、なっかなか面白い! からかい甲斐があるぞ!」
 


 廊下の真ん中を悠々と歩いているモジュがそこにはいた。
 自分達から余裕で逃げられると思って、廊下の真ん中を堂々と歩くとは。腹が立つ。
 モジュはふと立ち止まって、両手で口を押えながら笑いを噛み殺していた。


「しかしまあ、面白いモノ見たのう。猫耳なあいつ等ッ、思い出す度、笑いが止まらん! キモ過ぎじゃ!」

 
 誰がそんなキモイ姿にした?!
 あのクソチビジジイ、人をコケにしやがって!


 アルスとベルトルの青筋がくっきりと立った。
 怒りで身体を震わせている2人をフォルックは必死で宥めた。

 今直ぐにでも飛び出したいけれど、今飛び出せばまた逃げられるかもしれない。取り敢えず、モジュに気付かれないよう追跡しよう。あの様子だと自分達の気配に気付いていないみたいだし。

 フォルックが2人にそう告げれば、2人は頷いてフォルックの考えに乗った。

 3人は物音を立てないようにモジュの後を追う。
 スキップをしながら廊下を進んで行くモジュは、何処かへ向かっているようだった。

(何処に行くんだろ?)
(スキップするほど余裕なのかッ)
(あンのクソチビジジイッ、俺達舐め過ぎだろ?!)





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