005
「ラージャは、こんな俺を信じてくれてる。こんな俺を必要ともしてくれてる。俺が【マナ】を使えないせいでメーワク掛けてるっつーに。俺の気持ちに応えようとしてくれたりもしたし、自信を付けさせようともしてくれた。あいつはあいつなりに俺を励まそうとしてくれたんだ。俺はそんなあいつを、このまま死なすなんてデキない」
口に出して、改めて実感する。
ラージャが弱いとか強いとか結局のところ関係ないのだ。
メチャメチャ変態で手の掛かる奴だけど、遣ること成すこと馬鹿バッカするけど、ラージャは自分のパートナードラゴンだ。
自分の気持ちに応えようとしてくれる大事な相棒だから、ラージャを失いたくない。
「お前の考え方、そりゃ納得するとこあるぜ? 強いドラゴンが必要だってのはさ、『ドラゴン使い』なら当然そう思うだろうし。弱いドラゴンは邪魔になるだろうし」
頭を掻いてアルスはベルトルから視線を逸らす。
「悪かったよ。俺がお前等の関係に口出すことなんて筋違いだしな。お前とジランダがその考えで納得しているなら、俺は余計なことを口出してるだけだしな」
素直に謝罪してくるアルスに、ベルトルは拍子抜けした。
アルスは「でも…」と言葉を付け足す。
「ジランダがそれで納得してるなんて俺には思えないけどな」
「黙れ三流」
「あーそうだよ。俺は三流だ。1回も【マナ】を送れたことないし、ラージャに迷惑掛けてるし、身体にメチャ負担も掛けさせた。悪いと思ってる。けど、だからってラージャを手放すことはデキない。今、俺を信じてくれているあいつを手放したら、俺はあいつを裏切ることになるから」
成り行きで偶然の偶然にも手に入れたラージャだけど、今は手放せない。絶対に。
信じてくれているラージャの気持ちに、まだ自分は何も応えられてないのだから。
「お前の考え方がデキの良い立派な『ドランゴン使い』の考え方なら俺は三流のままでイイ。三流なりに三流として『ドラゴン使い』を目指す。俺のこと信じてくれてるラージャと一緒に」
他のドラゴンなんて要らない。新しいドラゴンも、代わりのドラゴンも要らない。
今の自分に必要なのは、あのパンツ好きなラージャだけだ。
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