004
「今はパートナーだな」
「今はだって?!」
「あ、アルス。べ、ベルトルくん」
慌ててフォルックが対立する2人の間に割って入ろうとするが、一度発火した喧嘩はそう簡単に鎮火しない。
ベルトルの言葉が信じられないとばかりに、アルスが反論する。
「前々から思ってたけどよ! お前ッ、ジランダの扱い酷くないか?! ジランダが意見しようとしたら、黙れとか、あしらったりとかッ」
「貴様に言われる覚えは無いが?」
「ジランダのこと、どう思ってるんだよ! これから先ずっと連れ添ってくパートナードラゴンだろッ?!」
「ずっとかどうかはジランダ次第だな。強ければ必要だが、弱ければ不要だ。次のドラゴンを探すだけだ」
「ッ……弱いと、要らねぇのかよ!」
「あいつも重々承知している」
アルスに言われる筋合いなど全く無い。
鼻を鳴らし、ベルトルが「貴様はどうなんだ?」と嫌味ったらしく聞いてくる。
「この中でただ一人、【マナ】を扱えない主人を持つあのドラゴンは哀れじゃないか?」
「……ッ」
「【マナ】を全く使えない無能な主人に仕える、あのドラゴンを手放さない貴様の方が酷いんじゃないか? あのドラゴンのは3匹の中で、1番魔力も強い。そういうドラゴンは【マナ】を使える奴に差し渡した方が、あのドラゴンの為じゃないのか?」
反論できなくなる。
確かに、自分は2人に比べたらデキが悪く、【マナ】なんて全く使えないし、【マナ】をラージャに1回も送れたことがない。
対してラージャ自身は他のドラゴンよりも魔力が強く、ベルトルがラージャのことを一流というのも頷ける。
ドラゴン使いの卵に成り立てだった頃は、ラージャの魔力とか関係なく、ただ成り行きで手に入れただけだった。殆ど勢いだったと思う。
自分がラージャを手に入れたのは偶然。例え、ラージャが自分を選んだとしてくれても小さな偶然に過ぎない。
そしてベルトルからすれば宝の持ち腐れ。
ベルトルは正論を言っている。
自分はベルトルに反論できるほどの実力を持っていない。
「そーだよ。俺はお前やフォルックみたいに【マナ】を扱えないし、この中じゃダントツ成績も悪いし」
「あ…アルス」
「この1ヵ月。お前等は【マナ】を使えて上達していくし、俺は全く使えないまま。これでも俺の才能のなさには落ち込んだ。焦りもしたし、ヤメたくもなった。けどな」
「何だ? 開き直ったか?」
嘲笑うようにベルトルがアルスに聞く。
アルスは怒ることもせず、昨日ラージャが言ってくれたことを思い出す。ラージャは、ド・変態ドラゴンだけど、言う時は言ってくれる奴だ。
まだ付き合いは浅いけれど、でも自分の為にハッキリと言い切ってくれた。
自分を信じているのだと。
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