002
『何たって俺ちゃまのパートナーだぜ? あいつに負ける筈ないだろ?』
『そう仰いますが、貴方のご主人さまは【マナ】を一度だって』
『そんなことカンケーない。俺ちゃま、あいつはベルトルに負けない力と気持ちを持ってると思ってる。あいつ、パンツ見せてくれないケチん坊だけどな』
するとジランダが「負けません!」と強く反論する。
それほどベルトルのことを信頼しているのだろう。
『ベルトルさまは3人の中でも、1番お力を持ったお方ですし、洞察力も判断力も冷静さも他の方々より長けています! だからこそ、あのお方には、よりお強いドラゴンが必要です。ラージャ、アルスさまからベルトルさまに乗り換えたらどうです?』
『はあ? 冗談言うなよ。俺ちゃま、そりゃ最強ドラゴンだけどな。俺ちゃまのパートナーはアルスだ。ベルトルのパートナーはお前だろ?』
『今は確かに。ですが、いずれかは、別のドラゴンがパートナーになるのです』
それにパートナーなんて勿体無い言葉、自分には不似合いだ。
ジランダがラージャから目を背ける。
ラージャと自分を比べれば、ラージャの方が魔力が上。ベルトルはより強いドラゴンを求めている。今自分にデキることは、ベルトルの為により強いドラゴンを共に探すことだ。
ラージャは、興味無さそうにジランダから目を放した。
『アルスはベルトルやフォルックよりもデキが悪い。【マナ】も使えないしな。けど、俺ちゃまは胸張ってアルスのパートナードラゴンだって言えるぜ』
『それが何だと言うのですか?』
『胸張って言えない時点で、お前、俺ちゃまに負けてるな』
悔しかったら胸張ってパートナードラゴンだって言ってみろよ。
挑発するようにラージャがジランダに笑って言った。
ジランダは何なんだとばかりにラージャを睨む。ラージャは意地悪くジランダに笑った。
『俺ちゃま、アルスのパートナードラゴンは俺ちゃましかいないと思ってるんだぜ?』
自分以外のドラゴンじゃアルスと釣り合わない。そう思っている。
ラージャの言葉に少しだけジランダが目を丸くした。
フフン、と鼻を鳴らしながら「アルスも幸せ者だぜ」とラージャは胸を張った。ナーガは呆れながらも、姉のように大きな肝と度胸が欲しいと思った。だっていざとなったらパートナーのフォルックを置いて逃げてしまうのだから。
『にしても、遅いよなぁ。あいつ等』
『何してるんだぎゃー……』
『そういえば、何だか、雲の流れが速いような気がしません?』
ナーガの言葉に2匹は空を仰ぐ。
確かに、雲の流れが速い。異常なまでに速い。そして太陽の動きも、いつもより速い。
そんな気が……した。
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