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国民の悲しいサガなんで。


 

 とは、言うものの、この国の法律は絶対だ。遵わなければならないのが、国民の悲しいサガ。

  
 アルスは家に帰り荷物を置くとフォルックと共に、ドラゴンを買いに行くべく、ドラゴンを売っている店へ向かった。母親にこのことを伝えれば、心底同情の眼差しを投げかけられて金貨を30枚渡してきた。「ドラゴンは自分で世話してね」と釘まで刺される始末。

 まずは、同情でもいいから慰めの言葉をひとつでもくれないだろうか?

 街中を歩きながら親の言葉を思い出し溜息をつく。
 結構な額を貰ったが、全てはドラゴンを買う金。

 布鞄に入っている金貨達の擦れ合う音を聞きながらフォルックに親の反応を訊ねる。
 フォルックは片頬を押さえて、虚ろな目をしていた。


 まさか、殴られたのか? だったら悪いことを聞いたかもしれない。



 しかし、フォルックの返答は意外なものだった。
 

 
「パパとママに報告したら、ほっぺにキスされた」
「……げっ、ちゅーされたのかよ!」
「嬉しかったんだって……弱気な僕が、すっごい職業に就けることが決まったこと。少しは性格、強くなるかもって……言われた」
「だからって」


 ほっぺちゅーはない。


 頬擦りまでされたと落ち込んでいるフォルックに同情してしまう。
 母親ならまだしも、父親にまでちゅーされるのは、自分だったら引く。ドン引く。っつーか殴る。


 罰当たりなことを思いながら、ウェレット王国に生まれたことを悔やんだ。


 職業選ぶのに、クジ引きはないだろ、クジ引きは。


「でも、アルスが一緒で良かった。不安だったんだ。ひとりだと思ったから」
「親友と一緒だと心強いよな」
「これから頑張ろうね! も、決まったものは仕方がないし!」

 開き直ったようにフォルックがはにかむ。
 アルスも同意して気持ちを入れ替えた。

「そーだな! よっしゃ、カッコイイドラゴン買おうぜ。俺達は、見習いだから、べビィドラゴンを買うんだよな」
「授業で習ったよね。あ、そういえば、オリアン……恐かったね」
「あ、あいつはな……最後には『目指せ、ペテン占い師』なんて言ってたもんな」


 語尾にハートマークをつけて甘ったるい声で『ペテン師バンザイ』と言っていたオリアン。


 そんなに、嫌だったか、占い師。
 人気のある職業なのだが。

 占い学が極端に嫌いなオリアンにとっては、最悪の職業だったのだろう。
 明日から学校で会うのが恐いとアルスは思う。





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