013
此処は自分達のいた学校ではない。
学校自体は、自分達の居た学校そのものだが、自分達以外、生徒も教師もいない。ウッパが作り出した学校なのだ。
つまり自分達は、ウッパの作り出した空間にいるということになる。
作り出した空間だからといって、学校そのものは自分達の学校のまま。
教室に入れば、生徒達の勉強机や物がそのまま置いてあるらしい。しかも学校の外には出られないときた。ますます、この特別授業から逃げられなくなったというわけでもある。
この授業をクリアすれば、自分達のブレスレットも外せるらしい。
ちなみに、このブレスレットの電流が流れるのは外そうとした時。
鍵も持っていないのにパートナードラゴンの鳥籠を開けよう、または壊そうとした時。それから3人が互いに離れて勝手な行動を起こそうとした時。後は…その状況になってからのお楽しみらしい。全く持ってお楽しみじゃないのだが。
フォルックは恐る恐るウッパに訊ねた。
「あの、僕はどうして両方の手首にブレスレットが付いてるんですか?それに僕だけ、その、電流とか流れないし」
「うふふ〜っ、流れない代わりに、色々と厄介だと思うです〜」
ウッパの言葉にフォルックは青くなった。
どんな厄介事が待っているのか、恐ろしくて胃がキリキリ痛むほどだった。
説明は終わりだとギュナッシュが軽く手を叩き「授業を始めましょう」と目を細くして朗らかな顔をした。
「僕達は、別の場所で君達の様子を見ていますから」
「日が暮れるまでにモジュを捕まえるよう頑張ってくらさいね。ちなみに私が作り出した空間の時間の進み方は、元の世界よりも早いので注意してくらさいね〜」
「あ、ちょっと!」
フォルックが2人を呼び止めようとしたが、その前にウッパが杖を振ってしまう。
ギュナッシュとウッパの姿がスゥーッと消えてしまい、3人は置いてきぼりになってしまった。痛い沈黙が下りる。
3人はお互いの顔を見合わせて、直ぐに目を逸らしてしまった。
3人で協力してモジュを捕まえるなんて、デキるのだろうか。
フォルックは特にアルスとベルトルの関係を心配していた。
この2人、些細なことで直ぐ揉める。2人の間に立つ自分が1番苦労するかもしれない。フォルックはそう思って仕方がなかった。
沈黙を打ち破ったのは、鳥篭にいるラージャだった。
『お前等ー! そこでぼぉーッとしてないで、さっさとチビジジイ捕まえに行けー!』
『なんで今日は喰われるに縁があるんだぎゃー!』
『ベルトルさま。ご無理はなさらないように』
3匹がそれぞれ思い思いのことを口にしてくる。
溜息を付いてアルスが自棄になりつつ「ジジイは校舎の中だろ」と2人に聞く。
「取り敢えず、テキトーに探そうぜ。それしかなさそうだし」
「黙れ三流」
「フツーに意見言っただけだろ?!」
「ッハ、三流の意見なんて求めてない」
「じゃあーお前が仕切れよ! “自称”一流のご意見を俺に聞かせてみろ! 絶対、俺と同じ意見なクセにエラソーなこと言うんじゃねえよ!」
「……ンだと?」
「何だよ!」
まだ何もしていないのに喧嘩を始める2人。本当に馬の骨が合わないのだろう。
あたふたと2人の間に立っているフォルックは、小声で「仲良く。仲良くしよ」と言うが全く聞いちゃイナイ。互いに睨み合い青い火花を散らしている。
そんな2人が恐ろしくなってフォルックは涙目になった。
「うわあああ〜ん! 喧嘩はヤメようよー!」
「ッ、!」
「イッテーッ!」
フォルックの叫び声と同時に、アルスとベルトルのブレスレットから電流が流れた。
2人が痛さで悶絶、それに気付かないフォルックはワァー! と泣き始めてしまった。
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