012
「もしも、日が沈むまでにパートナードラゴンを助けられなかったら、パートナードラゴンはこ〜なります!」
杖の先端から目映い光が集まる。
同時に地面のある一点が目映く光り始めた。笑顔が崩れ、ウッパは両手を広げると天に向かって叫んだ。
「我が名の下に蘇れ! 再びこの大地に降り立て! ―――いでよっ、食獣植物!」
肌で感じられるほど、空気がビリビリと震え、思わず肌が粟立ってしまう。
光り始めた一点の地面が裂ける。そこから地を這うような音が聞こえてきた。
刹那、太い蔓が裂けた空間から現れ、勝手に空間を広げていく。
徐々に不気味な色を持った歪な植物が顔を出し、そして完全にその場に姿を現した。
フォルックは真っ青な顔をして“食獣植物”を見つめる。
「食獣植物ッ、あれって物凄く獰猛な植物じゃんか。人や獣を栄養にしてるッ」
「よく知ってますねぇ。そーですよ。あの食獣植物ですぅ〜。もしも、貴方達が助けられなかったらぁ、パートナードラゴンは責任を持って食獣植物の栄養になってもらいます〜」
「な、何だって?!」
食獣植物は夜行性。
つまり日が暮れてから行動を起こし始める植物。日が暮れる前に助け出さないと自分達のパートナードラゴンは、食獣植物の栄養源となってしまう。
ウッパが召喚した食獣植物から少し離れた木に鳥篭を吊るしておくと、杖で近くの木をさした。
「食獣植物が目が覚めたらぁ、まず最初にパートナードラゴン達を見つけるでしょうねぇ。日が暮れる前にモジュを捕まえて下さいねぇ」
「ちょっ、ふざけるなよ! これの何処が授業だよ!」
アルスが非難の声を上げる。
変なブレスレットを付けられたことでも腹が立つというのに、モジュを捕まえられなかったらパートナードラゴンは食獣植物の餌食になるなんて冗談じゃない。
ウッパを睨み、今直ぐラージャ達を解放するよう怒鳴った。
「助けたいならぁ、モジュを捕まえて鍵を手に入れることですねぇ〜」
「だからっ! こんなの何の意味が」
「ありますよ? これは貴方達の能力を試す授業でもありますからぁ」
「……俺達の?」
「は〜い。ドラゴン使いは体力と精神力、洞察力、判断力などなど。色々と能力が必要ですからネェ〜」
自分達がどれ程の能力を持っているのか試したい。
にこやかに笑うウッパはそうアルスに説明する。
しかし、それで納得するアルスではない。
この授業のせいで、もしかしたらパートナードラゴンを失うかもしれないのだ。
命張ってまで、こんなことをする必要性なんて何処にもないではないか。アルスの意見にウッパが確かにと頷く。
「けれど、ドラゴン使いは危険な職業ですよ〜? いつ、マスターである貴方達が命を落とすか。いつ、パートナードラゴンが命を落とすか分かりません。授業だからって気を抜いていたらぁ、本番のいざという時、困りませんかぁ?」
「ウッ……そりゃ、そーだけどよ」
「それに、パートナードラゴンを失ったら、新しいパートナードラゴンを探せばイイんですよぉ?」
ドラゴン使いは数匹のドラゴンを持つのだから。
アルスはウッパの言葉に眉を顰め、話を逸らすように怒鳴った。
「こッ、こんな気味悪い植物、学校に置いておくなんてデキるのかよ!」
「うふふっ、その件に関してはダイジョーブイ」
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