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008


    
 ギュナッシュが時計に目をやる。
 現在の時刻、8時58分。あと2分で9時だ。ギュナッシュにつられるように3人も時計を見つめる。

 秒を刻んでいく時計の針をじっと見つめていると、教室の窓が突然全て開かれた。
 3人が目を瞠って窓の方に目をやると、窓から「ら〜るる〜ら〜るる〜」と奇怪なメロディーを口ずさむ声が聞こえた。

 窓をジッと見つめていると、今度は教室のドアが開いた。


「ら〜るる〜! おはよ〜みんなぁ〜元気ぃ? 私ぃ、げんきぃ〜よぉ〜」

 
 開かれたドアから不思議で奇怪な言葉が聞こえたような気が。
 3人はドアの方を見たくないと思いつつも、好奇心に負け、ドアの方に嫌々視線を向ける。開かれたドアの前に立っていたのは、自分達より幼い少女らしき人物。

 杖を片手に持っている少女は、目が痛くなりそうな黄色なリボンを首に巻いて付けている。

 ヒラヒラと手を振って少女が教室に入って来た。
 ギュナッシュの隣に並んだ金髪の少女が、教室を見渡すと杖で軽く床を一回叩いた。すると一斉にドアと窓が閉まる。
 目を見開く3人にギュナッシュが「注目〜」と手を叩いて前を向かせる。


「今日、特別授業をしてくれるウッパ・ポニータだよ」

「ウッパって呼んでくらさいね」

「ウッパの職業は『魔道士』なんだ。結構、有名な『魔道士』なんだよ」


 ウッパのことを紹介するギュナッシュの言葉に疑問を抱く。
 自分達は『ドラゴン使い』、なのにどうして『魔道士』を呼ぶ必要性があるのだろうか。3人が疑問を抱いていると、ウッパが3人の顔を一人ひとり窺うように見つめる。


「あら、久しぶりでぇすね」

「へ?」

 
 ウッパに突然「久しぶり」と言われ、アルスは困惑する。
 全く持ってこの少女とは初対面なのだが。
 固まるアルスに、ウッパが「あらぁ?」と首を傾げた。

「貴方、私のお向かいさんに住んでいるジョナサンじゃなかったですかぁ?」
「いえ……俺、アルスです。アルス・ウリダーケ」
「あらぁ。ごめんなさい。私ったら、勘違いしちゃったんですねぇ。そうですよね。考えてみればジョナサン、もう、10年前に亡くなってるし」

 あの、ゼンゼン、会話に、ついて、いけません。
 結局…人違いだったのか? ジョナサンが何処のどなたか存じ上げないけれど、10年前って俺、まだ5歳。というか亡くなってるなら、此処にいないというか。あの世にいるというか。
 そこでアルスはふと疑問を抱いた。


 ウッパって一体全体幾つなのだろうか?
 

 アルスの疑問がウッパに届いたのか、ウッパが細く微笑む。





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