004
「何してるんだよ。早く行こうぜ。遅刻しちまうぞ」
「あ、うん! そ…そうだね! っ……、あ、あああああアルス!」
「ン? どーしたんだよ。そんな青い顔しッ、げぇっ! オリアン!」
「げぇっ! なんて、光栄なご挨拶ね」
前方に立っていたのは、不気味な笑い声を漏らしているオリアン・ドレイバ。
どうして毎朝まいあさ、学校一不気味で恐れられている少女・オリアンと会ってしまうのだろうか! もしかして自分達は呪われているのだろうか?!
2人がつくづくそう思っている中、オリアンは片手の手中に収めている水晶玉をゆっくり持ち上げ、水晶玉越しにアルスとフォルックを見る。
「うふふっ、視える。視えるわ。あなた達の今日の運勢が!」
「ぼぼぼぼ僕等の運勢を視てくれるの?!」
「ッ、お、オリアン。占ってくれるのは嬉しいけどよっ」
『お前の占いサッパリ当たらないよな。やっぱ自称ペテン占い師を名乗るだけあるよな!』
また、ラージャは余計なことをほざく!
オリアンは不気味に笑い声を上げて「そうよ! 私はペテン占い師になるの!」と言った。
笑い声を上げる姿、漫画に出てきそうな典型的な悪役そのもの……なんて、口が裂けても言えない。言える筈がない。
オリアンの不気味な笑い声に、2人は真っ青になり、ナーガがカタカタ震えてフォルックの肩にしがみ付いてしまう。
この中で唯一オリアンに臆することの無いラージャが、ヤレヤレと呆れた。
『ペテン占い師なんて、お前。そんなに笑いモノになりたいのか?だったら芸人占い師にでもなったらどうだ?』
「うふふふっ、何ですって?」
『そのブッキミーな顔で占いプラス芸をしたら、絶対ぜーったい大衆にウケるぜ? 俺ちゃま、それは保障してやる! 手始めに俺ちゃまの前で芸してみろって!』
腹抱えて笑ってやる! ラージャが胸張って言った。
このクソドラゴンっ、また余計なことをほざきやがる!
確かに言われたら「あっ、そうかも」なんて納得しそうになったさ! けど、今、この状況をよく見てみろ! 確実にこの場にいる自分達が殺されるではないか!
昨日ベルトルに(ある意味)殺されかけたが、ベルトルの殺意なんて目じゃない。
冷汗ダラダラ流しているラージャとオリアン以外の者達を余所に、ラージャが更にオリアンに余計なヒトコトを言い放った。
『占い師にしろペテン師にしろ、どっちみち、お前、笑いモノ人生まっしぐらだけどな! まさにお前の人生そのものが芸人ジンセーだ!』
「うふふふふふふっ。よく言い切ったわね。黒蜥蜴」
『また俺ちゃまのことを黒蜥蜴って言ったな! 目ぇ腐ってるどころか見えてないんじゃないッ、ウグ!』
「もう何も言うんじゃねえ! ッ、お、おおおおオリアン。ごめん! こいつにはよーく言っておくからよ!」
アルスがラージャの口を塞いで「悪い!」とオリアンに謝る。
今のは幼い子供が意味も分からなく発した言葉なのだと、頭を下げて謝りつつオリアンから徐々に離れる。オリアンはニタァと笑って水晶玉を覗き込む。
「あんた達の今後の運勢。今日一日、お魚が食べたくなる一日ねぇ」
「へ、へえ。だってよ! フォルック!」
「そ、そそそそそいえばお魚。食べたいなぁー……なんちゃって」
「私は、あんた達を無償に貪りたい一日になりそう」
髪の毛1本残らず喰らってあげたいわぁ。
前髪で表情を隠すオリアンが歪んだ笑い声を一つ漏らす。
瞬間、アルスは悲鳴にならない悲鳴を上げフォルックと一緒に、全力疾走でオリアンから逃げた。
後ろから「ちゃんと残さず食べるわぁ!」と不気味な笑い声が聞こえる。振り返る余裕も無い。追い駆けて来ているのかどうかも分からない。
それでも、2人はそれぞれパートナードラゴンを胸に抱いて学校にすっ飛んだ。
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