002
「へえ、じゃあ、ラージャの体調良くなったんだ。良かったね」
「良かったけどよ。いつもどおりになっちまって」
ポケットに手を突っ込んで、グッタリと肩を落とすアルスにフォルックが苦笑いした。
横目でアルスがラージャを一瞥。ラージャは双子の弟、ナーガに朝からパンツについて熱く語っている。
ナーガは慣れっこなのか相槌を打って綺麗に聞き流していた。さすがは姉弟。あの変態トークをスルーするなんて並大抵の精神力ではデキないと思う。
元気になってくれたことは、確かに良かったのだが。
あの変態っぷりは……大きく溜息をついて、アルスが頭を掻いた。
ふと、昨日の騒動を思い返してアルスは気が重くなった。
ギュナッシュのあの顔、笑顔を引き攣らせて優しめに自分達にお説教してきたが、内心メチャクチャ切れていたに違いない。
フォルックも同じ事を思っていたらしく、グスンと鼻を啜った。
「うううっ、今日、本当は学校行きたくないんだよ。昨日の今日だし」
「な、泣くなってフォルック。俺だって行きたくねぇよ。俺、原因作ったひとりなんだしよ。洟拭けって」
鼻水を垂らしているフォルックは、洟を拭くこともせず「だって!」と叫んだ。
とにかく洟を拭いて欲しい。汚い。切実に思う。汚い。
アルスが少しフォルックと距離を取っていると、フォルックが両手を広げて「行きたくない!」とアルスの腰にしがみ付いてきた。
「フォルック! 離れろってー!」
「だって嫌なんだもん! 僕何も悪いことしてないのにィィイイ!」
「俺の服で鼻水拭くなってー!」
「うわーん! アルスの馬鹿ちーん!」
「俺だけのせいじゃねえって! ベルトルの野郎だって悪いッ、っつーか! 十中八九あいつが悪いって!」
喧嘩を売ってきたのはあっちなのだ。
攻撃しかけてきたのもあっちだし、自分を本気で殺すつもりだったようだし。
寧ろ自分は被害者ではないか! しかしフォルックは喧嘩両成敗だとアルスに訴える。両成敗ならベルトルだって悪いではないか。ベルトルにも悪態を付いて欲しいものだ。そう言えば、フォルック曰くベルトルは恐くて悪態が付けないらしい。
確かに、ベルトルに悪態付いたら、自分のように殺されかねないだろう。フォルックがそんな度胸を持っている奴ではないこと、アルスはよく知っている為、それ以上ツッコめなかった。
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