010 教室を飛び出したアルスは、取り敢えずベルトルとジランダから逃げていた。ラージャはアルスの隣に並ぶように飛びながら、「どうする?」と聞いてくる。 『俺ちゃま、相手するぜ! 俺ちゃま最強乙女ドラゴンなんだからな!』 「バッカ! 相手は【マカ】をぶつけてくるんだぜ?! いくらお前でもッ、うわっつ! しかも乙女ドラゴンってなんだよー!」 足元に放たれた光の玉を避けながら、アルスが「無理だろ!」と叫んだ。 少し思案して、ラージャが提案する。 『アルス、今、【マナ】を解放してみろよ!』 「はあ?!」 『物は試しって言うだろ? 呪文唱えてみろって!』 「けどッ、俺、成功した例ねぇし!」 『やってみなくちゃ分かんないだろ!』 「ッ……分かった」 こうなりゃ何でもやってやる! アルスが逃げながら、【マナ】をラージャに送る為のスペルを唱え始める。ラージャは身構えながら飛行していたが、全くアルスの【マナ】を感じられない。 小さく溜息をついて、アルスを見る。 『はぁー……失敗かよ』 「ウッセー! この状況じゃ無理だろ! ただでさえ成功した例ねぇのに!」 『分かってると思うけどよ。ただ呪文唱えるだけじゃダメなんだぜ』 「そ、そうなのか?」 『ッ、はああ?! 当たり前なこと言わせるなー! 1ヵ月の間、何してたんだよ!』 「知るかー! 何で教えてくれないんだよ!」 逆ギレ状態になりながら、アルスがラージャを睨む。 ラージャは信じられねぇとばかりに、深々と溜息をついた。アルスはラージャに溜息つかれたことが気に食わなかったが、反論する言葉も出ない。 校舎中を走り回るアルスは、自分の身を守る為、適当に目に入った教室に駆け込んだ。 [*前へ][次へ#] [戻る] |