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009


 
 蜥蜴のような舌をちろちろと出して、ラージャが自分を指差し「俺ちゃま最強!」と胸張っている。
 アルスは微苦笑して「ワルィ」と素直に詫びた。自分が【マナ】をちゃんとラージャに送れたら、ラージャにこんな手間を掛けさせずに済んだ。

 そこで思考が途切れる。
 ベルトルがまた、呪文のスペルを唱え始めたからだ。

 青白く発光するジランダが、大きく口を開く。目映いばかりの光の玉を吐き出した。
 当たれば爆発する! アルスはラージャを抱えると、駆け出した。光の玉は壁に当たって爆発してしまう。

 鼓膜破れそうな爆音に堪えながら、アルスが冷汗を流す。

「あ、アブネッ! お前! さっきから本気でやりやがって! たかが喧嘩で俺を殺す気かよ!」
「悔しかったら【マカ】を俺にぶつけてみせろよ。三流くん?」
「ッ、コノヤロー!」


「や、ヤメようよ! 2人とも!喧嘩は良くないよ!」

 
 フォルックが小さな勇気を振り絞って、2人の間に立つ。既に半泣きだ。ナーガは教室の隅っこで震えている。
 鼻を鳴らして、ベルトルがスペルを唱え始めた。
 
「ギャーッ! ナーガ! たすけて〜!」
『恐いだぎゃーっ!』
「でもでもでもっ、僕っ」
『自分でどうにかしてだぎゃー!』
「そんなっ!」


「退け! フォルック!」

 
 アルスがフォルックの身体を押した。
 先程の光の玉を吐き出してきたと分かったアルスは、どうにか攻撃を避けると廊下に飛び出した。舌を出して、ベルトルの怒りを煽る。

「“自称”一流さま凄いですね! めっさ尊敬したくなりマース! ある意味で!」
「……殺す」
「やってみろよ!」


「あ、アルス! ベルトルくん!」 

 
 教室を飛び出してしまった2人とそのパートナードラゴン。
 残されたフォルックは大泣きだ。教室の隅で丸くなっているナーガも、つられるように大泣きをしていた。
  



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