012
『そりゃ、仕方ないんじゃないかー? クジ引きで決まった職業だし、お前が望んでないんだから』
「だったら何でお前は」
『俺ちゃまがアルスを選んだからだ』
何を言っているのだ。
あの時、自分がラージャを選んだのは偶然。たまたまなのだ。
それなのにラージャは自分を選んだからと強く言う。
『檻の中で俺ちゃまはお前を一目見たときから、こいつだって思ったんだ。俺ちゃまの勘っつーのかなぁ。アルスが誰よりも、俺ちゃまの主人に相応しいって感じた。アルスが俺ちゃまを勢いだけで選んだとしても、俺ちゃまはあの時から、お前を主人に決めた』
例え、アルスにその気がなくてもラージャは構わなかった。
一目見た時からアルスを主人だと思ったのだから、自分は主人と共に歩みたい。
『俺ちゃまが主人って決めたんだ。だったら、俺ちゃまはお前を怪我させたら駄目だろ?』
足を止めて、アルスがラージャを見る。
「そうだろ?」とまともな事を言うパートナードラゴンに頬を掻いて言葉を探す。
いつもは馬鹿バッカしているラージャだけど、自分のことをこうも思ってくれているなんて知らなかった。知ろうともしなかった。
成り行きばかり嘆いていた自分が、とても恥ずかしい。
アルスは考える。
自分はこれからも成り行きに嘆くつもりだろうか? と。
それは自分を想ってくれているラージャに失礼ではないか? と。
ふと脳裏にベルトルの顔が過ぎる。
ベルトルの言葉、思い出しただけで腹が立つ。そしてベルトルに対してラージャが放った言葉、表には出さなかったが嬉しかった。
握り拳を作ってアルスは一呼吸置いた。
「ラージャ」
『何だよ』
「ドラゴンにとって、主人の気持ちって大事なものか?」
『お前なぁ。馬鹿だろ? 主人の気持ちがあってこそ、ドラゴンってのは強くなるんだぜ? ま、俺ちゃまは、今のままでもさいきょーだか』
「決めた! 俺は今日から本気でドラゴン使いを目指す! 死に物狂いであいつ以上に立派なドラゴン使いになるぜ! ラージャ!」
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