005
汗を流しながらアルスはラージャの入っているアミを大きく揺らした。
ギャースギャース悲鳴を上げているラージャに、アルスは「反省しろ!」と怒鳴る。アルスの目尻に涙が浮かんでいたのは、極々普通の自然現象だ。
クスリ、と地を這うような笑い声が聞こえた。
肩を震わせアルスはオリアンを横目で見る。
オリアンは笑っていた。かなり不気味に笑っていた。
「うふふふ、言ってくれるじゃないの。黒蜥蜴」
『誰が蜥蜴だ! 俺ちゃまドラゴンだっつーの! 目、腐ってるのか?』
「ッ、これ以上、お前、何も言うな!お、オリアン……こいつに代わって」
「私、お腹減ったなぁ。ペテン師になる前にお腹を満たそうかしら? そうね、スープ。そう、スープがイイわ」
あんた達を鍋にぶち込んだスープが食べたいわね。
前髪で表情を隠すオリアンが、ニタァと口元を歪める。
世の中には山姥というものがあるが、山姥だってオリアンには真っ青だ!オリアンが山姥を食っちまう!
悲鳴にならない悲鳴を上げたアルスとフォルックは全力疾走した。
背後から甲高く笑う不気味な笑い声が聞こえたが、そんなこと知ったこっちゃない!
命からがら学校まで逃げたアルスとフォルックは、教室に入った次の瞬間膝を折って恐かったと汗を拭う。
後ろから「置いていくなだぎゃ〜!」とワンワン泣きながらナーガがフォルックにしがみ付いた。
そのフォルックは、ワンワン泣きながらアルスにしがみ付く。
「ご、ごわがっだ〜! アルズッ、ごわがっだ〜!」
「泣くな! 俺が泣きてぇって! 大体……それもこれもっ、この馬鹿ドラゴンがッ、いねぇし!」
アミに入っていた筈のラージャがいない。
何処行った?! と慌てて教室を見渡せば「お疲れさん」とアルスの机の上に寝転がっているラージャを発見。
しかも、クラスで1番の美女と言われているユレーシャという女の子に「お前、パンツ見せろ!」とまで言う始末。
アルスはブチンと切れてラージャに突進した。
「ラージャぁぁぁぁ! お前はぁああ!」
『アルス、お前! 顔が不細工になってるぜ?』
からかってアルスの机から飛び立つラージャに、アルスは「ふざけるなー!」と大声を出して投げ出していたアミを掴みラージャを追い掛け回す。
ワンワン泣いているフォルックとナーガは泣き止む気配なし。
クラスメイトは思った。
こいつ等、朝っぱらからウゼェ……と。
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