004
「アルス。今日から職業別にクラスが分かれるよ」
「本格的に、修行が始まるんだよなぁ」
「そうよ始まるのよ!」
ビクッと体を震わせ、2人が恐る恐る振り返れば同じクラスメイトであるオリアン・ドレイバが不気味な笑みを浮かべてこちらに近付いてきた。
オリアンというこの少女、運命の職業クジ引きが行われる前までは普通のお転婆少女だった。
なのに運命の職業クジ引きで神の悪戯なのか、オリアンの最も苦手とする占い学と直結に関連する『占い師』という職業を引いてしまってからは、性格が一変。
一日中不気味な笑みを浮かべる不気味少女になってしまった。
恐るべし、運命の職業クジ引き。
ひとつのクジ引きで人の人生どころか、人格まで変えてしまうか。
2人の前に仁王立ちすると、クスクスと小声で笑っていたオリアンが甲高く笑い始めた。
何故だろう、目が血走っている。
ナーガは思わず主人の背に隠れる。その主人は、しっかりとアルスの腕にしがみ付いてオリアンから逃げていた。
冷汗を流しながら、どうにか笑顔を作るとアルスが片手を上げ軽く挨拶をした。
「よ、よお。オリアン。おはよう」
「うふふふっ、アルス、フォルック、見てて! 私は歴史に名を残すペテン占い師なってやるんだから! “愚民どもよ、私の占いに平伏しなさい!”これを格言にしてやるの!」
「ッ、こ、恐いッ……オリアン」
「フォルック、気持ちは分かるけど、まず言わせろ。俺の服に鼻水つけるな!」
「あーっははははは! 後世にまで私の名前を通してあげる!」
『後世どころか、占い師になった時点で御用になりそうだぜ?』
ウンウンと頷くラージャが妄想し語り始める。
きっと、占い師になって店を出したその日、第一号の客を占って詐欺行為を働き訴えられ、そのまま警察に御用。あっという間のヘイヘイ、さいなら・グッバイ・あんたはおさらばよ。
そして待っているは独房生活。薄暗いところで、ひっそりと占いの勉強をして泣く人生。
ババアになっても独房生活、ペテン占い師になり歴史に名を残すどころか、刑務所内のお笑いモノとなって名を残しましたとさ!
なーんて、ラージャが笑いながら言った。
真っ青になったのはラージャとオリアン以外の者。
何故、何故、このドラゴンは余計なことを言う!
確かに現実味あふれて、近い将来ありそうなことだが、それを口にしては駄目だろう!
いや、口にしても良いが、この場で本人の前で言うか?!
被害を受けるのは自分たちなのに!
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