003
アルスは急いで、玄関に向かうとドアを開けた。
やはり、ベルを鳴らしたのは親友のフォルックだった。肩にはフォルックのパートナードラゴンが乗っている。このドラゴン、ラージャの双子の弟で名前はナーガ。
変態と違って、社交的(でも物凄く臆病者)のドラゴンだ。
真っ白な鱗を持つナーガが挨拶してくる。
パンを銜えたまま、アルスは片手を上げて挨拶をした。
苦笑してフォルックは片手を上げて挨拶する。
「おはよ。アルス。ラージャ」
『おはよーございますだぎゃ』
『うーっす。フォルック、ナーガ、いつも早いんだな。もー少しゆっくり迎えに来てもイイと思うぜ? そーしたら、俺ちゃま、ゆっくり優雅に飯を食えるからな!』
『なんでラージャ中心なんだぎゃ?』
『俺ちゃまがこの中で1番エライからだ!』
「変態の間違いだろうが!」
『そんなことより! フォルック、お前はブリーフか? トランクスか? アルスはトランクスで柄まではッ、ギャース!』
奇声を上げてラージャが、ジタバタもがいている。
アルスがラージャを大きめの虫取り用のアミでラージャを捕獲したのだ。
アルスはフッと笑みを浮かべ、銜えていたパンを全て口に入れかみ飲み込むとフォルックとナーガに親指を立てた。
これは一応、態度で返さなければイケないのだろう。
フォルックとナーガは、空笑いしながら「よくやった!」と親指を立てた。
「……アルス。そのアミって」
「変態を止める為の七つ道具のひとつだ。俺はこの2週間の間に、変態を止めるのにどうにかならねぇか? って考えた末、七つ道具を考え出した!あとの六つもその内、登場予定だ!どうだ参ったか!」
「あははは、頑張ってるんだね」
『我が姉がご迷惑お掛けしますだぎゃ』
『コノッ、出せー! 俺ちゃまをこんな目に遭わせやがって!』
ギャースギャースと喧しい鳴声を出すラージャに、少しは大人しくしろ! とアルスが怒鳴る。
蜥蜴のような舌を出して、ラージャは「ゆーことなんて聞くか!」とそっぽ向く。
フォルックはこの2週間、全くと言っていいほど進展の無いアルスとラージャの関係に微苦笑する。
取り敢えず、学校へ行こうということになった。このままだと遅刻する。
フォルックがアルスに言えば、そうだなーと頷いて虫取りアミの持つ部分を肩に乗せるとフォルックと共に学校へ向かった。
ラージャはムスくれて抵抗を止めている。情けないとナーガが溜息をついていたが、ラージャはそれを一切無視して拗ねていた。
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