014
ドォオオオオオオオオン―!
刹那、爆音が空いっぱいに響き渡り、自分達に向かって魔法を掛けようとしていた商人達の頭上に雷(いかずち)が降り注いだ。
驚く間もなく、雨あられのように降り注ぐ攻撃は商人達を物の見事に捉え正確に急所を狙う。一体全体何が起きたのだろうか、目を剥きながら状況確認。するとどうだろう、高い空に巨大なレッドドラゴンが徘徊しているではないか!
ラージャ達とは比べ物にならない。
巨大なドラゴンは風を切り、雲を切り、空を切り、急降下して大きく口を開けた。同時に「避けるんだ!」空から声音が飛んできたため、三人はパートナーを連れて慌ててその場から逃げる。
「“この声が聞こえるのならば、汝、その力を糧にするがよい。我が力は今この時により、血となり、糧となり、そなたの肉体の一部と化すであろう”」
これは【マナ】をドラゴンに送るスペル。
避難しつつも、三人は空を見上げ、降下してくるドラゴンを捉える。赤きドラゴンの背に乗っているのは、我等がクラスの担任。ギュナッシュード・ユルファス。
普段浮かべている優しげな表情は一変、雄々しき闘志を宿した表情へと変わっている。証拠に持ち前のライトグリーンの瞳にも闘志が宿っていた。
「“運命の歯車は我等を選び、その軸に流され、我等を導いた。さあ、声を受け止めよ、糧を肉体とせよ、血を生命に変えよ。我が生命さえもそなたの一部となり、力を与えるよう。我等は一つになる”」
違う、これは【マナ】のスペルではない。
【マナ】以上に長いスペル。聞いたこともない言霊、その呪文。
「“我が力の名はマナ。生み出せ、マカジカルバースト!”」
ドラゴンとその乗り手、同時に閃光を放ち、光はやがて一筋の裁きの雷(いかずち)と化した。
耳のつんざく爆音と雷撃音、暴風が起こり、三人は仲良く後ろへと吹っ飛び、地面に転がった。
しかし三者、目は赤きドラゴンとその乗り手に釘付けだった。初めて聞くスペルに攻撃、その威力、圧倒的強さ。真っ黒焦げになって喪心している商人。すべてに絶句せざる得なかった。
そして三人の前にドラゴンがゆっくりと着陸。
ぴょんっと乗り手が飛び下り、地面に転がっている三人の前にニッコリと笑顔。こめかみに青筋を立て、仁王立ち。
「ハローハロー、みなさ〜ん。覚悟はできてますか? ……ふーっ…、この大馬鹿者ぉおおおおおお!」
ゴンーッ!
各々の頭に怒りの鉄槌が落ちてきたのはその直後のことだった。
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