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012



 
「“この声が聞こえるのならば、汝、その力を糧にするがよい。我が力は今この時により、血となり、糧となり、そなたの肉体の一部と化すであろう”」
 

 相棒以外の【マナ】を感じる。 
 
「“声を受け止めよ、糧を肉体とせよ、血を生命に変えよ。我が力の名はマナ―!”」

 例えるならば荒れ狂う灼熱、パートナーとはまったく【マナ】の質にラージャは瞠目したが、誰のものなのか容易に認識。一旦、攻撃の手を止め、【ドラ・マナ】と混合させる。

 軽く光り始めるラージャの隣に肩を並べ、「角度45度!」ベルトルは格子の中心部を狙うよう指示。
 指差す方角に向けてラージャは人間と混合した【マカ】を放つ。青い炎がうねりを上げながら、格子へと衝突する。ピシリっとヒビが入る格子を確認し、ラージャはベルトルと共に後退。
  
 【マナ】を送り続けていたアルスも、こめかみに汗を垂れ流しながら、「行けええええ!」声音を張った。
  
 


「お前はやりゃできる奴なんだっ、こんな檻に負けるな! ジランダ―――ッ!」

 


 ドォオオオオオン―!
 
 叫びは光線により掻き消え、格子は貫通、檻は見事に砕け、ジランダは勢いよく飛び出した。
 痛む体など念頭に無いベルトルは地を蹴って、傷だらけのドラゴンをキャッチした。血まみれの体を無視し、きゅうっと鳴くジランダは甘えるようにベルトルの腕に顔を押し付けてくる。「悪かった」恐い思いをさせてしまって本当に悪かった。軽く頭を撫で、後から手当てをするからと一言。

 すぐさま此処から脱出しようと、手を貸してくれた好敵手に振り返る。
 ベルトルは瞠目した。アルスは両膝を崩し、玉のような汗を垂らして、呼吸を乱していたのだ。「死にそう…っ!」おどけ口調も苦し紛れ。ベルトルは急いでアルスに駆け寄った。
 

「アルス、しっかりしろ!」

『アルスっ、大丈夫か?! …この馬鹿! だから無茶なことするなって言ったんだよ!』


 アルスの前に立ち、ラージャが頭を摺り寄せて心配の念を体で示す。
 「大丈夫だって」アルスは眩暈がしただけだと、かぶりを振ってゆっくりと立ち上がってみせた。余裕だと虚勢を張り、少しよろめきながらもすぐさま逃げようとベルトルやラージャに言う。
 

「すぐ…、騒動に追っ手が来る。逃げないと。俺達の目的…は、ジランダの奪還だからな…。逃げるぞ!」


 悪いけど、今は背負えないから。
 
 強がりを見せるアルスはベルトルの肩を叩き、ラージャと共に見張り役をさせているフォルックのもとに駆けた。神妙な顔を作っていたベルトルだが、ジランダを抱え、急いで彼等の後を追う。体の痛みは騒動ですっかり頭から飛んでしまっていた。




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