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011


  

「確実な方法で、俺はあいつを助けたい」
 
『ベルトルさま』
 
 
「ジランダ、少しだけ、アルスにお前を託す。だが忘れるな、お前は俺のパートナーだ」

 
 主人の想いを聞き、ジランダは泣きそうなほどの嬉々に支配された。
 本当は主人の【マナ】を受け入れたいが、ベルトルの言うように失敗する可能性もある。今は切な主人の想いを聞き入れ、アルスと今一度組むことにしよう。けれど心は主人のみ。紆余曲折しているけれど、やっぱり自分の主人はベルトル・ゲゼルなのだ。
  
 アルスもまたベルトルの願いを聞き入れ、「うっしゃ」気合を入れる。

 
「やってやろうじゃんか。あ、勿論、俺のパートナーは最強乙女ドラゴン一匹だけどな! だからそんなに拗ねるなって、お前が一番だよ」

『わーってるっつーの! 俺ちゃまの心は海よりも空よりも宇宙よりも広いんだからな! けど、今回だけだぞ!』

 
 相棒を取られぶすくれているラージャに、片手を挙げ、「ごめんごめん」後で好きな事に付き合ってやるからと微笑を浮かべる。勿論、変態行為は禁止だぞ、と付け加えて。
 
 「やるなら早く」フォルックはビクビクッと見張り役を買って出、ジランダを救出するように促す。
 
 首を縦に振り、アルスは【マナ】をジランダに向けて送り始める。
 すっかりと慣れたスペルを口にし、制御できない【マナ】のすべてを相棒ではないドラゴンに向かって全力で自分の魔力を注ぐ。同時に自分の力が抜けていくような気がした。足元がふわふわと浮遊しているよう。力を根こそぎ向こうに奪われているような。
 

 けれど、力を抜くわけにはいかない。

 好敵手にあのような頼み方をされてしまったのだ、手を抜くわけにはいかないではないか。
 

 輝き始めるジランダの体を確認、「今だ!」相棒に【ドラ・マナ】を混合させるようベルトルが指示する。
 頷くジランダは大きく口を開き、青く眩い光線を格子に向かって吐き始める。しかし、特別製なのか簡単には貫通してくれない。ドラゴン用の檻は魔法が掛けられているのかもしれない。

 「くそっ!」魔力を送り続けているアルスは、再び【マナ】を送るためのスペルを唱え始める。
 

「“この声が聞こえるのならば、汝、その力を糧にするがよい。我が力は今この時により、血となり、糧となり、そなたの肉体の一部と化すであろう”」
 
『馬鹿! ンな無茶振りで連続で送ったら、お前が持たないぞ!』
  

 ラージャに叱咤されるが、アルスは構わずスペルにスペルを重ねる。


「“声を受け止めよ、糧を肉体とせよ、血を生命に変えよ。我が力の名はマナ―!”」
 

 『この無鉄砲の頓珍漢!』ラージャは自分の【ドラ・マナ】を電撃に変え、外から格子に攻撃を加える。格子が壊れる寸前で止める筈で攻撃を止める計算だ。
 しかしラージャが加わっても、講師は赤く熱を帯びるだけ。強力な魔法が檻には掛けられているのだ。心中で舌を鳴らし、ラージャは苛立ちを募らせた。これではアルスとジランダが持たない。




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