002
アルス・ウリダーケ、15歳。
今の職業は『学生』だが将来の道は既に決まっている。
彼は、『ドラゴン使い』の卵で『ドラゴン見習い』という称号を持っている。
というのも、彼の住んでいる国、ウェレット王国では人生の進路を決める大事なことを、クジ引きで決めるという風習がある。
人生の進路とはこれから先の就職のことを指し、クジ引きで決まった職業は一生涯、その職業であり続けるというウェレット王国には変な法律がある。
就職を決めるクジ引きは、15歳になってからと定められている。
15歳になったアルスは見事その法律の餌食になってしまい、晴れて『ドラゴン使い』という職業をゲットしてしまった。
『ドラゴン使い』という職業を引いてしまったからには、ドラゴンを飼わなければ話にならない。
アルスは、自分と同じように不運な職業をゲットしてしまった親友のフォルックと共にパートナードラゴンを買いに出掛け……そして、アルスは成り行きでラージャ(別名:変態ドラゴン)をパートナードラゴンとして選んでしまった。
勢いのまま選んだことに悔いはあるが、一応パートナードラゴン。
アルスは、ラージャを家に連れて帰り飼うことに決め、世話をすることになった。
そのラージャが家に来てから2週間が経った。
朝食に並べられているパンを手に取り、半分に千切ってラージャに渡しながら、アルスはラージャに言う。
「お前な。その穢れきった腐れ思考、どうにかなんねーのか?」
『そーゆーお前は女々しい思考どうにかならないのか?』
「明らかに俺の行動は自然だろ。ったく、パンツ、パンツ、パンツって」
『パンツだけじゃないぞ? 俺ちゃま、他にも萌えるものが』
「萌え言うな」
『またお前はそうやってドラゴン差別をする!』
いや、差別というかとにかくその発言を控えろ。
パンツに萌える時点で変態だ、お前。
アルスの本音だ。その変態ドラゴンの飼い主が自分なんだから、尚更控えろ。
自分が苦労するばかりではないか。つくづくそう思う。
頬杖ついて溜息をつくアルスに、母親が「可愛いじゃないの」とスープの入ったお椀を渡しながら言ってきた。
『ホラ、可愛いって言ってくれるぜ?』
「可愛い? マジかよ、お袋」
「ドラゴンって恐いイメージあったけど、こういうこと言うんだもの。ラージャちゃんは女の子だし、お母さん、ホッとしちゃったわ」
「恐い方がマシだろ。変態より」
「変態って可愛げないかしら?」
ねぇから!
いや、全然可愛くねぇから! 毎日このドラゴンと共に行動してみるが良い! そこら辺の恐面した奴の方が、まだマシってぐらいこのドラゴンの変態レベルは高い。
ウンザリするなんてもんじゃない。可愛いなんてお言葉とは無縁だ。このドラゴン。
大きく溜息をつくアルスが朝食を食べていると、ベルの鳴る音が聞こえた。
母親が「フォルックちゃんじゃない?」とアルスに言う。
絶対そうだとパンを口に銜え、隣の空いた椅子に乗せていた肩掛けの鞄を手に取り、スープを飲んでいるラージャを呼んだ。
ラージャはスープを飲んだ後、サラダに入っていたプチトマトを手に持って、アルスの後について行く。
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