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010


 


 ―…ガンッ―! ガンッ―! ガンッ―!
 

 
 と。


 背後から衝突する音。
 垂れ幕向こうから、微かにだが聞こえてくる。アルスとフォルックは顔を見合わせ、急いで垂れ幕向こうにある檻部屋に戻った。もう一度檻を覗き込み、音の正体を探す。
 
 ガンッ―! 音は確かに聞こえてくるが、若干音が遠いような。
 
 もしかしたらこの部屋ではないのでは。垂れ幕近くの部屋にジランダがいるのでは。急いで部屋を飛び出し、倉庫スペースがないかどうか周囲を見渡す。すると垂れ幕の隣に布地の衝立を発見。
 向こうは小道具が置いてあるようだが…、人がいないかどうか確かめ、恐る恐る中に足を踏み入れる。
 

 
 ガンッ―! ガンッ―! ガンッ―!

  
 
 ケタタマシイ音共にガタガタと揺れる一つ長方形型の箱。積まれている木箱の上に、それは放置されていた。布で覆われているが、箱は檻のようだ。
 「まさか」アルスはベルトルを背負ったまま急いで、箱の前に立つとラージャに取っ払ってくれるよう指示。飛行するラージャが素早く布を取り払うと、そこには出血しているグレーのドラゴンの赤ん坊が収納されていた。ジランダだ。

 口輪をされているが、確かにジランダが檻に収納されていた。嗚呼、良かった、まだ無事だったのだ。
 
  
「ジランダ!」


 息を吹き返したように、ベルトルはアルス越しからドラゴンの名を呼ぶ。

 
『!!!』


 大好きな主人が目前に現れてくれた。
 
 翼を広げ、喜びを表すジランダはこっちに来ようと格子に向かって体当たり。
 体が傷だらけな理由が見えた。ジランダはこうやって檻を突破しようと、捨て身で格子にぶつかっていたのだ。「分かった、分かったから」ベルトルは再会できた喜びと同時に、痛々しいパートナーの姿に泣き笑いした。

 もういい、こっちで助けるから。少し体を休めろ。
 気遣いにジランダは驚いた様子だったが、小さく頷き、ぐったりとその場に身を置いた。まずは口輪をどうにかしなければ。アルスはベルトルを一旦、床に下ろし、ジランダにこっちに来てくれるよう手招き。

 格子の隙間から顔を出してもらい、口輪を外してやった。
 
  
「これでよし。次は、檻をどうやって開けるかだな。鍵は」

『盗っ人のひとりが所持しています。スペアキーはないようです』


「ということは、抉じ開けるしかないな。けど、この檻の強度は高そうだな…、だからってこっちが【マカ】で攻撃を加えたら…、ジランダまで」


 眉根を寄せて思案していると、ベルトルが懇願に極めて近い願いを申し出てきた。
 内容にアルスは驚愕。ベルトルはアルスとジランダにもう一度組んでくれるよう頼んできたのだ。自分とジランダは今のところ不調、もしかしたら失敗してしまうかもしれない。ジランダが【マナ】を拒絶する失敗だったらまだしも、自爆でもされてしまったら…。
 
「今のジランダは自爆に耐えられるような体ではない。貴様なら、きっとジランダも強力な【マカ】を生み出す事が出来る。アルス、頼む。ジランダともう一度組んでくれ」

「俺でいいのか?」

 ベルトルの性格を考えると、好敵手の自分がパートナーと組む光景なんて見たくない筈。
 しかし彼はそんなことを言っている場合じゃないのだと、微苦笑。
 



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あきゅろす。
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