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008


 
 ということで反対側、裏口に回り、三人はひょっこりと中の様子を窺う。
 向こう一杯に広がるテントの周りには木箱や麻袋が沢山散らばっている。商売道具なのだろう。おかげで身を隠すことが容易だ。見張りもいないようだし、行くなら今しかない。
 
「何かあったら“変態ドラゴン対策七つ道具”があるしな」

「出た…ラージャの変態を止める道具だよね。それ」

「確か中身は虫取りアミ、ブーメラン、投げ縄、釣竿、パチンコ&ビー玉、ドラゴン笛、木槌の七つだったな」


「おうよ、心強いだろ?」


 いや、微妙。
 フォルックとベルトルの気持ちは一つになっていた。それで対抗できるのならば、ベルトルはとっくにジランダを取り戻している。

 もごもごと鞄に身を隠しているドラゴン達が外に出たいとばかりに意思表示してきたが、もうしばらく我慢しろと言い、三人は意を決して敷地に足を踏み入れる。こそこそっと忍び足で積まれている木箱の陰に隠れて、少しずつ前進。前進。ぜんし…。
 
 「裏に置いてある薬品、中に入れるんだったな」前方から声が聞こえ、三人は硬直した。
 この先は木箱がない。嗚呼不味いぞまずい、このままでは見つかってしまう! 三人は咄嗟にテントを巻くって中に潜り込む。おかげで向こうに見つかることはなかったが……。


「なんだ、ガキ共?」


 テント内で商品の整理をしていた下っ端らしき男には、見事に見つかってしまった。

 やばい。三人は冷汗を流したが、「早速使いどころだ!」アルスはベルトルに鞄の中から“変態ドラゴン対策七つ道具”の一つを取り出すよう指示。ベルトルは投げ縄を相手に向かって投げると、ターゲットを見事キャッチ。
 そのまま力強く、「泣き虫!」とどめをさすよう声音を張る。


「ええっ、泣き虫って僕のこと?!」


 否定は出来ないけど、涙ぐむフォルックは鞄から怯え切っているナーガを取り出し、相棒に【マナ】を送り始める。
 少量の【マナ】を受け止めたナーガは恐怖に怖じながらも相手に向かって氷の息吹を放つ。おかげでロープごと相手が凍りついた。氷付けになっている下っ端を見やり、ホッと胸を撫で下ろすフォルックはありがとうとばかりにナーガを抱き締め、『いきなりは酷いぎゃー』自分も恐かったとナーガは泣き言を漏らす。

 やり取りもそこそこに、アルスもラージャを鞄から出すと急いでジランダを探そうと駆け出す。
 騒動に気付かれてはいないが、時間の問題。ジランダを奪還してトンズラしなければ。

 テント内は広いものの、物が密集しているため、とても息苦しく思える。
 商売道具達に身を隠しながら、間あいだをすり抜け、三人は重宝庫スペースを探す。ドラゴンは貴重だ、きっと重宝として取り扱われ、仕舞われているだろう。うっかりと商人と鉢合わせにならないよう、棚や麻袋の中を確かめながら、歩いていると目前に垂れ幕が現れた。


 人がいないことを確かめ、ひょっこりと幕の向こうに顔を突っ込んでみる。

 そこにはズラッと等間隔に並べられた檻の数々。大きな檻にはドラゴンが収納されていたのだろう。ドラゴンの牙らしきものが内部に落ちていた。開かれた檻達を見比べ、三人は閉じられた檻達の何処かにジランダがいるのだと確信。急いで檻の中を覗いて見る。

 ドラゴン以外にも窃盗を繰り返しているのか、見たこともない虹色の鳥や黄金の猿が収納されている。ジランダではない。

 すべての檻を調べたが、結局グレーのドラゴンは見つからず、「やはりジランダは…」ベルトルは最悪の事態を想像し始める。そんなことない、と無責任な言の葉は言えなくなっている状況下。
 
 アルスとフォルックはベルトルの言葉を聞き流し、しきりにジランダの姿を探す。ラージャやナーガも飛行して、棚などを調べるがジランダはいない。




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