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作戦ナシ、とにかく奪還せよ!


 

 さて、こっそりと荷馬車を降りた三人は南門前をうろついていた。
 
  
 おぼろげな情報を頼りに此処までやって来たが、ドラゴンを盗んだ輩は一体何処にいるのやら。
 念のため、アルスとフォルックは自分のパートナーが狙われないよう、各々の鞄に相棒を隠している。「さーてとどうするかなぁ」アルスはベルトルを背負いながら、二人にこれからどうするかと意見を求めた。
 
 「情報収集かな?」フォルックの助言はご尤もだが、出店を開いている商人達になんと物を尋ねればいいのだろうか。
 ドラゴンの盗難に遭ったのですが、怪しい輩を見ませんでしたか? とでも言えばいいのだろうか。しかし、ろくな情報が集まらない気がする。もっと別の手で、しかも向こうの油断を突けるような方法はないだろうか。

 思案をめぐらせていると、フォルックが思い付いたとばかりに手を叩き、少し待っててと二人を置いて、とある店に飛び込んだ。
 首を傾げる二人だったが、程なくしてフォルックが店が出てきた。
 

「お待たせ。ちょっとお父さんに電話してきたんだ。僕のお父さん、警衛団だからさ。南門付近で近寄っちゃいけない場所って分かるかって聞いてきた。
そしたら、ここから南東にある空き地には近寄らないように、だって。あそこの空き地は度々テントが張られて、他国の商人が店を構えているらしいんだけど、結構物騒な人達がテントを張ってるんだって。住民の人は滅多な事じゃな近寄らないらしいよ」


 大通りを抜けた先の南東にある空き地を探ってみたら、もしかしたら…、とフォルック。
 

 なるほど。可能性は高いだろうし、危険地域を探るのが最善の手でもあるだろう。二人は頷き、早速行ってみようと声を揃える。時間は短縮したい。こうしている間にもジランダの命が危ぶまれているのだから。
 

 三人は駆け足で南東に向かった。
 大通りを抜け、裏道を走り、三人が辿り着いた先にはグルッとレンガ塀で囲まれた家々。周囲を見渡しながら、空き地らしい場所を探していると、雑木林に差し掛かる。警戒心を高めながら、木々をすり抜け、三人は足を止めた。
 
 そこには劣化しているレンガ塀、高さ二メートル弱といったところだろうか。
 出入り口には怪しげな商人達が何やら会話に花を咲かせている。「良い物を仕入れてきたんだ」「もしかして例のあれか?」「そう、ドラゴン」「赤ん坊か?」「おうよ」会話により、奴等がジランダを盗んだのだと容易に理解する。

  
「赤ん坊はすげぇな。だったら肝を売ってくれよ。子供の肝は質がいいんだ」

「今すぐ持ってきてやろうか?」


 今すぐ持ってきて…、三人は青褪める。まさか、もうジランダは。
 「中に入れてくれ」拝見したいのだと買い手の商人が言い、「いいぜ」とびっきり上等なんだと売り手の商人がテントの中に誘い込む。



「じ…ジランダ…」



 間に合わなかった、蒼白な顔を作るベルトルがポツリと零し、「ちょ、まだ決まったわけじゃないだろ」アルスは励ます。
 なにせ向こうは王国を騒がしている窃盗集団。他のドラゴンも盗んでいる筈だ。自分の目で確かめるまでは、希望を捨てては駄目だと言い放ち、アルスは裏からテントに潜り込もうと提案。




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あきゅろす。
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