009 『俺ちゃま、ラージャ。弟はナーガって言うんだ! 分かったか、ガキ!』 「お前ッ。人間様に対する態度がなってないな」 『ドラゴン様に対する態度、お前もなってない!』 「よーし決めた。お前、絶対躾けてやる!覚悟しろ!」 変な方向にキレ始めたアルスにフォルックは内心「いいのかなー」と遠目をする。 勢いに任せて、ラージャをパートナーに決めたが……意外と気が合うかもしれない。 ウン、信じるよ。アルス。というか、頑張れ。応援するから。 ナーガを撫でながらフォルックは、ウンウン頷いた。 「まずはその腐った脳みそを叩きなおしてやる! パンツ好きを直す!」 『なにぃぃ?! 直せるかー! これは、天命だ!』 「天命も何も知ったことか!俺だって、『ドラゴン使い』っつーある意味天命を受けた身だ! クジ運の悪さに嘆きたいほどな!」 『クジ運も悪けりゃ、面も悪いな。お前』 「ッ、この、く、そ、ど、ら、ご、ん!」 ギロッとラージャを睨むと関節を鳴らした。 ラージャは舌を出して飛んで逃げ始める。 追い駆け始めたアルスは、怒号をあちらこちらに散らしながらラージャに全速力で突っ込む。檻の上に上っては飛び下りて、ラージャを追い駆ける姿はなんて逞しい。 もう、ある意味輝いた光景だ。眩しい。 友好関係を築く一歩は、何事も言いたいことを言えるような雰囲気を作ること。 だから今の光景は、たぶん微笑ましい光景だと言えるだろう。 「こっちに来い! ラージャ!テメェの腐った脳みそを躾けてやるー!」 『お前の名前知らないぜ?俺ちゃま。知らない奴の言うこと聞けるか』 「アルスだ! アルス・ウリダーケだ!」 『おー分かった。じゃあ、アルス。パンツ見せろ』 「っだああああ! 腐れメスドラゴンがぁぁぁああああ! テメェは、ぜってー、オスだ!オス!」 『失礼な! そうそう、俺ちゃま、裸エプロンやコスプレにも興味が』 「どっからそんな情報仕入れてやがる! ドラゴンのくせに!」 『お前っ?! ドラゴン差別するな!』 ラージャを追い駆けながら、アルスは今日という日を呪った。 クジ運の悪さといい、この国に生まれた運の悪さといい、そして何よりドラゴンを選ぶ運の悪さといい。 それでもこの国の方針には逆らえないし、『ドラゴン使い』として1歩を踏み出している。筈。 こうなったら、凶暴ではない代わりに、変態ドラゴンを完璧に手懐けて、必ず立派な『ドラゴン使い』になり、それなりの地位を掴み取る! そしてこの不運な運命を笑い飛ばしてやる! と、アルスは微妙な理由で『ドラゴン使い』になることを心に誓ったのだった。 End 後書き⇒ [*前へ][次へ#] [戻る] |