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008


 
 一発で勝敗は決まった。

 グーで勝った男達に対し、チョキで負けてしまったココロ。


「わ、私…ままままま負けてしまいました!」


 慌てふためいている。可哀想…ココロ。
 だけどココロってすんごく良い子だから、素直に罰ゲームに応じた。「誰にやればいいんでしょう…」と困った顔で俺達を見てくる。俺達はグルッと周囲を見渡して、顔を見知りを探す。
 
 と、丁度、いいところに昼寝から目を覚ましたシズを発見。
 設置されている長椅子で寝てたシズは、そこで大きな欠伸を零している。ココロは顔をトマトみたいに真っ赤に染めて俺達に言い切った。

  
「わ、わ、私、シズさんのところに行って来ますっ! え、えっちいな発言をすればよかったんですよね! 行って来ます!」
 

 そうそう、えっちい……なんですと?!

 
「ちょッ、ココロ、違うって! 恋人まがいな台詞っ、あ、ココロ!」

「違うってー! オレの言った罰ゲームは恋人まがいな台詞…、ココロー!」

 
 俺達の呼び止めも虚しく、ココロはガッチガチに緊張しながらシズのもとへ。
 ココロ、テンパっちゃってるみたいで罰ゲームの内容が頭の中で別のものに変換されちゃってるよ。大丈夫かよ、ココロ。

 俺達が見守ってる中、ココロは寝起きのシズの前に立った。
 
 ぼーっと宙を見つめているシズは、不思議そうに自分の前に立つココロを見上げた。真っ赤な顔を作っているココロは体を微動させている。


 ……ほんと大丈夫かよ、ココロ。


「ふぁ〜…、ココロ、どうした?」
「し、し、し、シズさんっ!」

「? どうした」

「し…シズさんのっ」
「自分の?」


「えっちい!」

「え………っ、え?」


 眠気が吹っ飛んだみたいでシズは大層間の抜けた顔を作った。
 ココロはガタが外れたみたいに喚き始める。


「シズさんのことッ、信じていたのに寝言がまさかっ…シズさんがそこまでえっちい人とは知りませんでした! 私っ、今夜、シズさんのこと期待してますっ、バカえっちいー! 私を食べたいなんて、すっごく期待しちゃいますからー! っ、今日はお赤飯なんですね!」
 

 こ、ココロっ! 罰ゲームの内容よりもすっげぇこと言ってるぞ!
 
 
 カチンと固まっているのはシズ。状況が把握できていないみたいだ。
 肩で息をしているココロはシズと目が合った瞬間、これ以上になく顔を赤くして「お嫁にもらってくださいねっ!」両手で顔を隠して、一目散に逃げ出す。「ま、待てっ!」シズは珍しく大焦りでココロの手首を掴んだ。

「寝言で何を言った…、自分は寝言で何をっ…」

「わぁああもう駄目ですぅううう! 私っ、シズさんと一生顔合わせできませんっ!」


「こ、ココロッ…!」

「っ、ふぁあぁあああああ?! こんな地味女のことなんて忘れて下さい! 私、悪い子ですぅうう!」

 
 ギャンギャン騒ぎながらココロはシズの手を振り払って、三階の四隅にある女子トイレに駆け込んだ。
 「シズさんと一生顔合わせできなぃいい!」女子トイレからはココロのパニクった声が聞こえる。




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