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006


   
 さっきから仲良く三人で駄弁ろうとしてるんだけど、ゼンッゼン会話が弾まないというか、協調性がないというか、駄弁り組としてはある意味最悪だって。
 モトがいなければ地味同士でそれなりに話が出来るし、ココロがいなければゲーム好きとしてそれなりに話が出来る。俺が抜ければ二人もそれなりに話は出来るだろうけど、この三人ってのが厄介な組み合わせなんだよな。

 ようやく髪染めの話題で話は弾んできたけど、なんか妙にモトにお小言貰ってるかんじ。髪染めのことであれよあれよ小言をぶつけてくる。


「ケイもさ、ココロもさ。どーんと染めちまえばいいじゃん! 愛と勇気を友達にしなくても簡単に染められるぜ? 何で躊躇うんだ?」
 
「(愛と勇気と友達にツッコミたい俺がいる)そりゃ、地味のサガっていうか」
「つまんねぇサガだな!」
 

 うるせぇな! 不良のお前と地味の俺を一緒にするなボケェ! 地味のサガ舐めてると酷い目遭うぞ! ……って言えたら清々しいんだろうな。


「愛と勇気をお友達にしないと染められないんです。私」
 

 そしてココロはなんか間違った返答してるし! そこ真顔に返答するところじゃないって!

 両者にツッコみたいようなツッコみたくないような衝動に駆られていると、二階で格ゲーしていた筈のワタルさんがやって来た。「ゲーム飽きちゃったっぴょん」ウザ口調で独り言を吐きながら、駄弁りに混ぜてもらおう俺達に歩み寄って来る。
 スロットマシーンに設置してある椅子に腰掛け、何を話していたのか尋ねてきた。髪染めの話だとココロが言えば、なーんだとばかりに頭の後ろで手を組んだ。


「僕ちゃーんはてっきりえっちいお話でもしてるのかなぁって」


 爆弾を投下してきやがったな! ワタルさん!
 
 「そんな話してるわけないじゃないっすか!」モトが何言ってるんだとばかりにギャンギャン吠え、
 「…え……え……え……え?」酸素を求める金魚みたいに口をパクパクしているココロが顔を真っ赤に染め、
 「ワタルさんっ、変なこと言わないで下さい!」俺はたっぷり冷汗を流しながら大いに焦った。

 俺達の反応に「ははーん。してたな?」ワタルさんはニヤニヤ笑みを浮かべてきた。
 いやいやいやいや、俺達の反応は自然だろ?! 突拍子もなくそんなこと言われてみ? 誰だって焦るから! ブンブン首を横に振って否定をしている俺達に対し、「若いんだからもう」ワタルさんは自分の膝に肘を置いて頬杖をつく。

 あっらぁ、そういうワタルさんは相も変わらず俺達をからかうのがお好きなんだからもう。……ノッた俺のお馬鹿。 
 

「それにしても暇だよねぇ。何かないかなぁ。ケイちゃーん達もゲームしないで暇っしょ?」

「金欠気味だから仕方ないです。ヨウさんとエアホッケーしたかったけどな」
「私はそういうのに興味ないですし…お小遣いもあまりないですから。お金を掛けないものがあればいいんですけどね」
 
 「そんな都合の良いものありませんよね」ココロの何気ない一言に、ワタルさんはピーンと閃いた顔を作る。


 なんかヤァーな顔、ヤァーな予感。
 

 こういう時は巻き込まれる前にそそくさと逃げるのがイチバンなんだけど、ワタルさんから逃げる、イコールそれはワタルさんに喧嘩を売るってことで。
 俺、ワタルさんに喧嘩売れるほどの度胸持ってねぇし? かの有名なカツアゲ伝説を作っているワタルさんから逃げられる人がいるなら、是非とも見てみたい。
 
 ワタルさん、そんじょそこらの群れてる不良じゃないし、喧嘩のビフォー・アフターがゼンッゼン違う。
 何度かワタルさんの喧嘩を拝んだことあるけど、ドドドSな手で相手をいたぶるんだぜ?! 鬼畜ってもんじゃない! 例えばピ―――(放送禁止用語)とか! 手と足を捻ってピ―――(放送禁止用語)とか! 極め付けにピ―――(放送禁止用語)とか!

 
 あ…、あんな手でいたぶられるくらいなら、死んだ方がマシ! マジで! 知ってるだけに、ワタルさんに喧嘩売るとか、お馬鹿極まりないこと、俺はしないぜ!

 ブルッ…っ、思い出しただけで悪寒が。
 
 
 俺が身震いしている余所で、ワタルさんは指を鳴らしこんな提案をしてきた。
 



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