005
俺が逃げ込んだ先はサボりの場として過ごしているいつもの体育館裏、じゃなくて第一視聴覚室。
途中で教室にいた筈のハジメに会ったんだ。「こっちこっち」ハジメに誘導されて飛び込んだ教室が第一視聴覚室。スッゲェぼろっちい教室で中はどんよりと白っぽい。殆ど空気の入れ換えをしてないのが分かる。
前の扉は錠が掛かってたんだけど後ろは鍵を閉め忘れてたのか、すんなり中に入れた。中に入るや否や、俺は近くの席に崩れ込んだ。
もう無理ッ、走れねぇっ!
ゼェゼェ息をついている俺に対して、ハジメは大爆笑。苦しく息を整えている俺と目が合って思いっきり噴き出してきた。
おまっ、唾が飛んできたぞ! しっかも笑うなんて失礼な奴だな! こっちは必死で舎兄から逃げてきたってのにっ! ついでにタコ沢からも逃げてきたんだぞ! お前もいっぺん追い駆けられてこーい!
……なんて一言も言えないのは、ハジメも立派な不良だから!
見ろよ、銀に染めちまってる派手な頭。お洒落に香水なんかふっちゃってさ。俺とは絶対違う分類の人間だろ。
「どうだったどうだった? ケイちゃーんやってくれた?」
「やってくれよ。さっすがケイ、期待は裏切らなかった」
「うっそん! 僕ちゃーんも見たかったなぁーなぁーなぁー。なんで僕ちゃーんが来るまで待ってくれなかったの」
ニタァニタァ愉快そうにニヤけながら俺達のところにやって来たのは、嗚呼、やっぱりワタルさんか。今日も素敵な頭、オレンジだぜオレンジ。俺には絶対手の出せない色だよ。
んでもってこの人が俺に阿呆なことをさせた原因なんだよ。
「僕ちゃーんも見たかった!」ぶぅぶぅ脹れるワタルさんに引き攣り笑いを浮かべながら、俺は(思い出したくもないけど)昨日を振り返る。
―――事の発端(んでもって総ての元凶)はワタルさんの何気ない思い付きだった。
その日、俺はヨウに誘われて(断る勇気もなくて)いつものようにゲームセンターへ足を運んだ。三階建てのゲームセンターの最上階を陣取っている俺達は、そこでこれまたいつものようにエアホッケーとかスロットマシーンとかUFOキャッチャーとか、二階にある格ゲーとか、金を使いたくない奴は駄弁るとか。ダラダラした時間を過ごしていた。
丁度俺は金欠期を迎えていて、極力金を使わないよう駄弁り組に回っていた。
けどこの駄弁り組が妙な面子だった。俺含めて三人だったんだけどひとりは、
「ヨウさんの舎弟を名乗るならな! 髪くらい染めろよ! あ、金髪はヤだかんな! アンタと被りたくない!」
ヨウ信者不良のモト。
やっかましいの鬱陶しいの無駄に吠えるの、とにかく煩い奴。ヨウの舎弟に立っている俺のこと敵視してる。人の格好からオーラから何からグチグチ言ってくるもんだから腹立つ。しかもゲームの話になるとコロッと表情を変えて俺に纏わり付いてくる…、すんげぇご都合主義。んでもってもうひとりは、
「わ…私も染めるべきですよね。皆さん染めてますし。でも私、染める勇気ないんですよね」
ションボリと肩を落としているのはココロ。
俺と似たり寄ったりな地味っ子で妙に親近感を抱く。きっと地味だからだろうな。ココロも髪染めてないし、化粧してないし、ピアスの穴あけてないし、ゼンッゼン不良に見えない。
ココロはいつも響子さんや弥生と一緒にいるんだけど、弥生はUFOキャッチャーに勤しみ、響子さんはひとりで煙草を買いに出掛けたらしい。暇を弄ばせて俺達のところに来たってかんじ。
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