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「でもな、めっちゃ面白いんだって、これ!」


 ダンマリになる俺が白眼視しているとでも思ったのか、ケイは必死こいて面白いことを主張。

 だから俺は白眼視しているわけじゃなくて…。
 あー、そういや俺、自分の好きな事にはケイを振り回しているけど、ケイが好きなことには付き合ったことねぇな。飲み会も手前がしたいからしたわけで。当然ケイも付き合ってくれるものと思っていたわけで。少しは俺、ケイに付き合うべきかもしれねぇな。

 だってこいつ、いっつも俺に付き合ってくれてるだし。
 
 本音を言えば、ケイから付き合って欲しいって言って欲しかったけど、アニメを好き好んでは見ない俺の性格を知っていたから遠慮していたに違いない。モトはゲームするし、結構アニメとかも見るみてぇだけど…、あいつからもアニメやゲームについては誘われたことがない。俺がそういう系に疎いって知ってるから。
 
 「ふーん」俺はケイの説明に鼻を鳴らして、シーズン1であろうDVDの一巻を手に取る。
 「オモレェの?」ケイに再三質問すれば、「そりゃもう」最近はレンタル店に通い詰めているとケイ。寝不足になるほどハマッてます、授業その他時間が睡眠時間になるほどハマッています、胸を張る舎弟に一笑した。

 なんか久々にノリの良いケイを見たって感じ。


「んじゃあ俺も見てみっかな。モトもハマッてるみてぇだし」

「マジで?! んじゃあな、んじゃあな、取り敢えず一巻から三巻まで纏めて見てみて欲しいんだ! そこでハマるかどうかが決まるから!」


 大興奮したケイは、爛々と目を輝かせて俺の手にDVDのケースを置いていく。
 「俺的にはシーズン3が面白くてさ」ヨウにはそこまで辿り着いて欲しいって我が儘があるけど、とにかく今はシーズン1で面白さを判断して欲しい。熱弁する舎弟はまるで押し売りセールスマンのようだ。ペラペラと右から左に説明してくれる。
 
 ちょっと待て、ケイ、初心者用に説明レベルを落とせ。
 単語たんごに理解できねぇところがあるぞ。あ、今、ネタバレまで口走っただろ? バッカ、ネタバレはご法度だろうよ。


 結局よく分からんままケイのハマッているDVDを借りた俺は、ケイに楽しんでくれよな、と声援を送られてしまう。


 せめて一巻だけにすりゃあ良かったな。アニメなんて一気に見れるほどの根気ねぇぞ。元々アニメ見ねぇタチだし。
 けどケイ、なんか嬉しそうだったな。仕方がねぇ。たまにはあいつに付き合ってやるか。倦怠期じゃなかったにしても、あいつ、こういうのに餓えていたみてぇだからな。五木達と楽しそうに駄弁っていたってのは、つまりそういうことだろ?




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