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「あっひゃっひゃっひゃ! ヨウちゃーんどうしたわけっ、倦怠期に入っている彼女みたいな悩みを持ってくれちゃって! け、ケイちゃーんと喧嘩でもしたのりたま?! ぶふっ、ま、まじょーウケる!」

「ククッ…、ヨウ、乙女期か?」

「君がそんな不安を持つなんて、やっぱりケイと喧嘩したんだろ?」
 

 るっせぇな、喧嘩なんざしてねぇっつーの。
 眉根をつり上げる俺は三人にガンを飛ばして、ビール缶に入っていた残量を一気飲み。握力を込めると簡単に缶はひしゃげた。ボディが柔らかいアルミだからな、缶は悲鳴を上げて形を崩れてくれたみたいだ。

 俺の不安を盛大に笑ってくれやがったキャツ達は、ニヤニヤとなんでそんなことを思っているのか質問してくる。
 こいつ等の質問は心配からじゃなく面白ネタを見つけたって気持ちからだろう。顔を見りゃあ嫌でも分かる。言わなきゃ良かったぜ、クソッ。
 「なんでもねぇよ」もう忘れろと俺は不機嫌に返して、シズの開けたスナック菓子を鷲掴み。欠片がカーペットに落ちたけど無視して、バリボリバリボリバリボリ。
 
 ドドドドド不機嫌になったことで、ちぃーっとハジメが空気を読んだんだろう。


「ケイが舎兄弟を解消するわけないだろ? 君とあんなに仲が良いんだし」

「そりゃ仲は良いけど」

「舎兄弟で居続けようって約束もしてるんだろ? ヨウ、言ってたじゃないか」

「それも言ったけど」

「じゃあなんで、急に解消なんて口にしているのさ。まさか飲み会に断られ続けていることを根に持った発言?」

「そうじゃねえんだけど」


 釈然としない俺の態度に、「だったら何?」ハジメが憮然とビールを飲み干す。
 言ったところで笑われるだけだろうから言わない。てか、言えるか…、俺が無理やりに舎弟にしたこと行為が、今になって不安だとか。俺とケイの兄弟の始まりは青春くせぇもんじゃねえ。
 単に俺がケイの性格に目を付けただけのこと。そう、目を付けただけのことなんだ。

 だけどケイは舎弟として俺の仲間のピンチにチャリを飛ばし、俺の背中を追いかけ、さり気なくフォローしてくれようとしている。
 
 喧嘩は弱いけど、あいつは俺のサポートをいつだってしてくれた。
 自覚を持って舎弟として毎日を過ごしていたあいつに対し、俺はといえば…、溜息をつきたくなる。今でこそ自覚を持った舎兄の立ち位置だけど、舎兄弟って自覚を持つのに時間を要した。手ぇ焼かせてることばっかだ。
 
 しかも俺、あいつに助けられてもらってばっかり。最近じゃよく家に呼んでくれて、家に居場所のない俺を泊めてくれる。あいつの家族は、俺を家族ぐるみのように付き合ってくれる。


 ―…スッゲェ助かっているし、楽しいんだけど…、ふと俺はいっちゃん最初の俺を思い出して思うんだ。


 ケイは戻りたいんじゃないか?
 舎弟じゃなかったあの頃に。俺と知り合う前のあの頃に。何事も無かったあの頃に。近頃の態度を思えば、そう疑心を向けることも仕方が無いわけでして。




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