013
「―――…遅くなった、悪い。やっと決まった。ん? 皆、とても、張り切ってるな」
大量のデザートを持って戻って来たデザート食べ放題の主催者は、俺等の皿に積まれているデザートの山を見て珍しく柔和な笑顔を零す。張り切ってもらえるとこっちも誘った甲斐がある、なんて言うシズに俺等は誤魔化し笑い。
各々デザートを口にしてもぐもぐごっくん。難しく言えば咀嚼、嚥下、咀嚼咀嚼咀嚼嚥下を繰り返して心中で溜息。あー美味い、デザート美味い。皿の上のデザートが食えるかどうか、不安になってきたんだけど。
……調子に乗りすぎたな、猛省だ猛省。
フルーツって有り難いな。酸味で甘味が誤魔化せるし。だけどまだ、ケーキが三つも…、ケーキがこんなに辛いなんて思いもしなかった。うぇ。
「嗚呼、甘いなぁ…、次はワッフルか。付け合せのアイスがまた甘そうのなんのって。ワッフルに掛かってるブルーベリージャムの酸味が俺を助けてくれてる筈だ。うん」
「ケイ、テメェはまだいいじゃねえか。俺なんて今から、カスタードクリームたっぷりのシュークリームだぞ。さっき重たいモンブラン食って、カスタードって…めちゃくそ重いっつーの」
「俺っち…、ガトーショコラっス。濃厚っス。一口食べる度に喉が渇くっス。ケイさん、チョコ系ばっか選んできてくれてどーもっス。〜〜〜っ、あっさりしたのが食いたいっス」
「ううっ…、ババロア。地味に強敵。喉通りが悪い。アアアッ、その次はチェリー タルトっ。チェリーはオレの敵っ…! ヨウさんが選んでくれたから文句はないけど、でも、チェリーは苦手っ…」
もはや地獄を味わってます、俺等。
調子に乗って選んだデザートの山を各々完食してるけど、こんなにも苦しい目に遭うなんて!
大体モトとキヨタが悪いんだぞ、あんな量のデザートを選んでくるから。俺等も調子に乗って…、いや調子を煽ったのは俺だけどさ。
甘味バッカのデザートにうんぬん言っている間にも、シズは黙々とデザートを平らげていく。
ペースは速く、俺等の方が先に食べ始めたにも拘らず、「おかわり」シズはさっさと完食して席を立つ。
俺等の食べるペースが遅いだけなのか? そう思ってたけど、シズは明らかに食べるペースが速くて、やっと全部のデザートを食べ終わった頃、またおかわりに席を立っていた。
胸焼け一歩手前の俺等は、飲めもしない苦い無糖珈琲(ブラックコーヒー)をオーダー。苦い汁を胃に流し込んで気を紛らわす。
食い終わった俺等はもう、生クリームその他の甘味に襲われずに済むって思ってたんだけど…、シズのその食いっぷり。大食らいの勇ましい食いっぷりに、次第次第に胸焼けがしてきた。「おかわり」また席を立つシズに嘘だろ、ヨウが嘆いた。
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