010
苦笑いを浮かべたキヨタは、さっさとモトをつれてデザートが並べられているであろう台に向かった。
デザート食い放題はバイキング形式になっている。食べ放題の方はご自由に幾つでも食って下さいって寸法だ。ドリンクの見放題付きでお値段は1500円。元値は取り戻さないといけないよな。
よし、目標は1500円分を平らげること。あと胸焼けしない程度に量をセーブすること。これでいこう。
それにしても…、皆とこういう風にプライベートで遊べる日が来るなんてな。ほんと不思議な感じ。
「カンケーねぇんだって、結局のところは」
ん? 俺は突然口を開いたヨウに視線を向ける。
テーブルには舎兄しか残っていないから、必然的にヨウと駄弁ることになるわけなんだけど、ヨウはカフェオレ飲みながら俺を流し目。
んでもって肩を竦めて微笑する。
「何が言いたいかっつーとケイは俺等の仲間だってことだ。今になってケイがいねぇチームも考えられねぇしな。また遊ぼうぜ」
ヨウは俺の性格を重々把握している。俺が無意識に皆と一線引こうとするその性格を。
ま、仕方が無いよな。俺、地味っこい奴だし、向こうは不良だし。友達だけど皆に遠慮しちまう俺の悪い面を、何より舎兄が理解してくれてるからこんなクサイことを言ってきてくれる。地味でも仲間だってな。
あーあ、イケメン不良にこんなこと言われちまって。女子の皆様が羨むようなことを言われちまったもんだ、俺も。
「ヨウってよくもまあ…、そんな小っ恥ずかしいこと言えるよな」
オレンジジュースを飲みながら照れ隠しをする俺に、「だって声に出てたし」あっけらん顔でヨウが指摘。
どうやら俺は“皆とこういう風にプライベートで遊べる日が来るなんてな。ほんと不思議な感じ”を口に出してたみたい。小さな独白なんだからスルーしてくれても良かったのに、ヨウも大概でお人好しだな。
「二年に進級したら同じクラスになれたらいいけどな。全員が同じクラスメートになったらウケると思うぜ」
「ははっ、それってチーム全員集結ってことか? ヨウにワタルさん、えーっと弥生やハジメ、それからタコ沢…」
………。
めっちゃくちゃ煩くも酷いクラスになりそうだな。
フッ、ヨウ達と一緒のクラスになれば、それこそ俺の平穏が決壊する。
特にヨウとワタルさんがタッグを組めば、俺の二年の生活は地に落ちたも同然! サボりまくりの毎日になって出席日数が足りなくなって、三年で大地獄を見るんだ。今だって危うい生活を送っているっつーのに。
ううっ…タコ沢とだけは一緒のクラスになりたくねぇよ。あいつ、俺とヨウに恨み抱いてるもんだから、一緒のクラスにでもなってみろ?
『今日こそ雪辱を晴らしてやる! 表に出やがれごらぁああああ!』
毎日がタコ沢と決闘地獄っす!
嫌だ…、俺は…、できれば地味友と一緒に平和に過ごしたい。利二とか、俺の最も愛すべき地味友だぞ。薄情だけどさっ、あいつと離れ離れになったら最後、俺は誰に頼って嘆けばいいんだ。
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