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008



 
 俺って土壇場になると不良達と一線引くところがあるからな…。

 
 まあ、不良が嫌なんじゃなくて、なんとなく情けない自分を見られたくなくて、自分から壁を作る悪い俺がいるから。
 ああいう風に俺の中の境界線を跨いで、友達として接してくれる、んにゃチームの仲間として、一人の仲間として扱ってくれるのは凄く嬉しい。

 時々思うんだよな、俺ってどうして不良とつるんでるんだろうって。
 ヨウの舎弟以外でつるむ理由なんて、居場所なんてないんじゃないか。そう思う卑屈な俺もいるけど、普通に友達だからつるんでるんだよな。不良や地味なんて関係なく、友達だから。
 今日も不良と地味じゃなく、舎兄弟だからじゃなく、チームのためでもなくて、俺が地味友と遊ぶように、不良と遊ぶ約束を交わして遊んでる。友達として。

「それも悪くないよなぁ」

「ケイ?」

 戻って来たシズが何をしているんだと手洗い場に顔を出す不良に、「何でもない」俺はくしゃりと笑みを返して歩み出した。友達のもとに。
 笑ってる俺にシズが何を笑ってるんだって可笑しそうに一笑。内緒だと言う俺も一笑。なんとなく気持ちが通じ合っている気がした。
 
 皆のところに戻ってみると、「ああぁああああいいいいっす!」キヨタにやたらめったら盛大に叫ばれ、「やっとイケたな!」それくらいしないとモトに皮肉られ、「いいじゃん」ヨウに普通に褒められた。
 皆の反応も上々、俺はご機嫌でシズに再度礼を言った。

 今日は皆、不良と地味じゃなくて、友達として過ごす一日しよう。不良なんて意識しないし、俺も地味だって意識しない一日するんだ。

 
「ケーイ、俺はこっちの色を使ってみて欲しい。意外と似合うって! んでメッシュを入れりゃ舎兄弟の絵になる!」

「うぇええ…、ヨウさん、ケイさんにシルバーっすか。違うっす。ケイさんにはレッドっすよ! 男気ある色っす!」

「てか、まずはピアスあけてみることじゃね? ケイ、ピアッサー安く売ってるぞ」

「あけて…やるぞ…?」


 ………。

 ま…、向こうが不良だってことは意識せざる得ない気がする。
 俺は深い溜息をついて、皆の気が済むまで売り場を遠くから眺めることにした。ちなみに皆が何をやっているかというと、服装が変わったことを契機に地味っ子を不良デビューさせようと、半分面白がってヘアカラーやピアスを見て回っているなう。
 

「やっぱ不良と地味の壁は越えられそうにねぇや。はぁーあ」
 
 
 勿論、これを契機に俺が不良デビュー! …することなんてなかった。きてたまるか、バカヤロウ。




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