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007



「ケイ…、折角だ。着替えてきたらどうだ?」

「へ? 今から」

「そうしよう…。カウンターでハサミを借りてくる。値札は取らないと…な」


 えええ、今からぁ?
 いや、そりゃ確かに気に入ったけどさ。今からってっ、ええ?!

 俺の意見も聞かず、シズはカウンターでハサミを借りると、さっさと俺の背中を押して手洗い場に。
 ハサミを手渡し、俺を個室に押し込んで着替えろって言ってくるもんだから、俺は仕方がなしに着替えることにした。そんなに今の服装ダサイか? まあいいけどさ。
 
 値札をハサミで切り取って、俺は今着ている服と、買った服をチェンジ。
 服装だけちょっとイケちゃいました圭太に変身した。
 
 今まで着ていた服は買った服に入っていたビニール袋に畳んで入れる。
 値札がほかについていないことを確かめて、俺は個室を出た。待ってくれていたシズは俺の身形を見るや否や、うんとまた一つ眠そうに、でも誇らしげに笑ってくれた。


「雰囲気が…違う…。いいかんじだ」

「ありがとな、シズ。ほんと嬉しかった。こんな風にしてもらえるなんて」

「いや…、大したことはしてない…。ただ、そうだな…。ケイを見てると…もう少し、服装をどうにかしたくなる。哀れんで…しまう」

「……。服装センス無くてすんません、ほんと」
 
 
 どうにかしたくなるほどダサかったんっすか? だったらごめんなさいです、はい。

 でも、俺は気にしない。元々ダサい奴だから! 諦めてるよ、俺の地味&ダサい部分!
 え? 諦めが早い? 馬鹿を言え。人生諦めてナンボのもんだぞ。俺、諦めがいいから潔く不良の舎弟になってるんだぞ。うん。…嘘、今は諦めたけど、舎弟、結構なまでに白紙を考えてました。諦め悪い男です、俺。
 
 
「それに…、ケイにはもう少し、自信…つけてもらいたいしな。思ってるほど…ケイはダサイ奴じゃない。大人しいだけだ」
 
  
 目尻を下げてくるシズに、俺は柄にも無く照れた。凄く照れた。 
 地味とかダサいとか凡人とかは言われ慣れてるし、自分でも言ってるから別段平気なんだけど、まさか逆のことを言われるなんて。不良さまにこんなこと言われるなんて!
 
 「あ、あぁありがと」俺はしどろもどろに礼を言って、しきりに頬を掻く。
 

「お、おれ…その、地味っこいから…うん、まさかそう…言われるなんて。いっやぁ、周りからは正反対のことを言われることが多いし」

「悪く…、思って欲しくなかったのかも…しれない。ダサイんじゃないんだと…、見返して…やりたくなる。つるんでる…仲間だからこそ」


 柔和な笑みを浮かべてくるシズは戻ろうと俺に言い放ち、背を向けて一足先に手洗い場を後にする。
 俺はというと呆気に取られていた。んでもって見事にシズの友情に惚れそうになっていた、マジで。ぎこちなく頬を掻きながら、次第次第に綻ぶ俺がいた。シズに仲間だって思われてるのかな、少しならず。
 



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