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 さてさて、俺のゲームソフトを買い終わると、ちょっと服を見ていきたいってヨウが言ったから、俺等は服屋に足を運ぶ。
  
 服屋って行ったら女の子が行く場所って思ってたんだけど(服は母さんに任せ切りだったし)、ヨウが連れてってくれた場所はメンズ専門店。男バッカ。店員も男。だから気軽に服屋に入れた。
 俺を除く不良達はお洒落さんだから、服を見て回ってるけど、俺はあんま興味ないから出入り口付近でたむろ。
 皆が見終わるまで気長に待つことにした。

 そしたらシズに呼ばれた。
 「ン?」何で呼ばれたんだろ、首を傾げながらシズの元に足を運ぶ。俺が来るや否や、シズは眠たそうに欠伸を噛み締めながら、これなんか似合うんじゃないかってお洒落なカットソーを手に取った。

 あ、シズ、服のカケラも分からない俺のために合わせてくれてるんだ。
 やっぱシズって同級生ながら思うけど、お兄さんだな。


「ケイは…、何でも似合いそうだ。髪を染めていない分、なんでも…馴染みやすい」

「そっかなぁ?」

「ああ…、自信を持っていいと思う…。デニムはこっち…がいいな」

 
 ひとりでうんうん頷いているシズは今日持ち合わせはあるかって聞いてくる。
 あるっちゃあるけど、さっきゲームで使ったしな。あんまお金は使いたくないんだけど…、って言う前に、シズが「少し出してやる…」食べ放題に純粋に付き合ってくれる奴だし、ここは安いから。
 
 なーんて言って俺を試着室に連れ込む。
 選んだ服を着るよう言われて、俺は断ることも出来ず渋々と着替えた。あんま気乗りしないんだけどな。俺、何を着ても地味だと…あ、でも鏡に映る俺、結構お洒落? じゃん? 俺の着てた服よりかは全然カッケー!
 
 あ、容姿はまんま地味だけどな!
 服で顔がイケメンになるかっつったらそうじゃないんだぜイェーイ! 平凡面バンザイ! 俺みたいな奴がいるからイケメンくんが目立つんでい!

 ……だけど一度でいいからイケメンになってみたいなぁ。


「女の子にキャー言われたいって言うかさ。うん」

「ケイ…? 終わったのか? 独り言…聞こえてくるが」


 あ、しくった、俺、お得意の独り言劇場をやらかしてたみたいだ。


「ちょ、チョイ待ち! ボタンを留めてっと…、うわぁ、シズ、センスいいかもしんねぇ!」


 そう言いながら俺は試着室のカーテンを開けた。
 向こうで待っていたシズは、俺の姿を見るやうん、と頷いて満足気に笑う。


「やっぱり…似合うな」

「シズ凄いな。地味の服装を此処まで改善できるなんて。センスあるよ」

「大袈裟な…。ケイは…、まだよく分からないだけだ。その内、自分で選べるようになる…」


 いやいやいや、俺に服のコーディネートセンスはないんだな。
 まず服に興味を持たないから。
 
 結局シズの選んでくれた服が気に入ったから、俺はこれをお買い上げすることにした。
 予想外な出費だったけど、シズに選んでもらった服、本当に良かったんだ。自分でも気に入ったしな。意外と安かったし、シズもちょっと出してくれたし、買って損は無かった。またシズにコーディネートを頼もうっと。

 俺等が服を買っても、まだヨウ達は服を見ている。
 特にヨウはお洒落のイケメン不良さんだから見るのに時間が掛かってるみたいだ。「ああなると…長いんだ」シズは苦笑いを零して、俺に視線を投げてきた。




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