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電車に乗って、近場の複合商業施設(簡単に言えばショッピングセンターを中心に、レストラン、映画館、遊戯場などを併設した建物のことだな)にやって来た俺等は早速映画を観にチケットを買う。
俺の趣味ではあるけど、皆、海のレスキュー隊映画に興味はあったらしい。異存はなかった。
今から観る映画はドラマでも結構なまでに人気だったしな。
映画も今まで二本、上映されてるし。今回で完結するんだけど、完結作品だけ観ても内容が分かるようになってるらしいから、そのドラマを観たことない奴でも安心して観れる。
適当にポップコーンとかジュースと買って、いざ映画館へ。
まだ上映時間まで余裕があったから、手洗いに行ったり、駄弁ったりして時間を潰すことにした。話題はもっぱら映画のこと。みんなの趣味について聞けるチャンスだと、俺も不良達の会話に積極的に加担していた。
「俺、あんま恋愛映画は得意じゃねえ。ベタなのを観ると鳥肌が立つ」
やっぱ観るならアクション系がいい。
ヨウはポップコーンを口に運びながら自分の趣向を教えてくれる。
俺も同じく、恋愛映画は得意じゃない。恋愛要素の交えてるアクション系映画とはいいんだけどさ。まんま恋愛映画ってのはちょっと…、女の子が好みそうな恋愛映画は苦手かな。
「俺っちホラー映画大好きなんっす!」
キヨタがウッキウキとしながら趣向を語ってくれた。ホラー映画みたいにゾクゾクする映画好きなんだって。
俺も観る分には好きだけど、キヨタみたいにウッキウキとしては観ないな。なんっつーの? 恐いんだけど、恐い物が見たいってヤツ? 好奇心に負けて観ちまったはいいんだけど、「観なきゃ良かった!」って後悔するタイプだ、俺。
「やっぱあれだよな。アクション映画が一番面白いって」
ハリウッド映画は最高だってモトはジュースを飲みながら言う。
「同じく」俺はモトに共感した。最近のハリウッド映画はあんま面白くないけど、少し前のハリウッド映画は最高だった。映像もさながらアクションがカッケー!
最近は邦画が面白いって思うようになったけど、小さい頃ハリウッド映画バッカ観てたな。
「映画に…、好き嫌いはないが。自分はアレが一番好きだ。映画ではないが…、」
「ん? 何かのドラマか?」
ヨウがシズに疑問を投げ掛ける。
シズは首を横に振ってポツリ。
「キユーピーが出てくるアレ…。三分でできる。凄い…。美味そう」
………。
俺等は物の見事に固まった。キユーピー3分クッキングのことだろ、それ。
シズのテレビを観る大半は料理番組だってことが判明した。この食いしん坊不良め。
さてさて、辺りが暗くなり上映前告知が始まったから、俺等はお喋りを止めてスクリーンに専念する。
CM後、本編が始まった。大音響の中、スクリーンをジーッと見つめる俺等が映画館を出たのは、それから二時間後。
映画館を出た俺は、観て良かったとポケットティッシュで洟をかんでいた。いや、俺って映画とかドラマに対しては涙もろいからさ、ついつい涙が…、だから一人で見たりする事が多いんだけど、いやぁ今回も涙が。
まあ、俺以外にもモトやキヨタが俺と同じような状態になってたから安心だけどさ。
「テメェ等…、感動はあったけど泣くまでかよ」
「いやー、俺、涙もろくて」
「オレ…、不覚にも涙が出てしまって。ケイ、ティッシュ」
「ケイさん、俺っちにも一枚恵んで下さいっス」
呆れるヨウに構わず、俺達は揃って洟をかんだ。
いやぁ、いい映画だった。
後日、もっかい観に行こう。今度は一人でな! ヨウ達の前だったから、そこまで涙が出なかったんだぞ! 我慢したんだぞ! ……まあ、結果的には泣いたんだけどさ。
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