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016




「体育館裏でサボってるかと思ったら、今日は視聴覚室か。まあ、どっちにしろ、見つけたからにはそれ相応の対処をするけどな」
 


 わぁーお…、これはやばくね?
 俺達は顔を見合わせた。
 
 直後、俺達は一斉に逃げ出した。
 後先なんて考えちゃない、とにかく逃げなきゃいけないって本能が警鐘を鳴らしたんだ!


「あ、こら!」


 前橋の呼び止めを無視して、俺等は後ろの扉から廊下に飛び出ると一目散に逃げた。その際、俺はさっきのジャンケンを思い出す。
 
 そういえば、俺、さっきのジャンケンで負けちまったんだよな。情けないことに。負けたのは一人じゃないけどさ、実質負けちまったし、この際、やっちまうか。同じことを思っていたらしく、負けたもう一人の相手が俺に声を掛けてきた。
 あーあ、こんなことしちまったら、後で大目玉だぜ。

 俺は足を止めて、ヨウと二人で一緒に後ろを振り返る。
 前橋の名前を呼んで、俺とヨウは声を揃えた。



「「愛してるんだぜ、ドッキューン」」
 

 
 バーン、手で銃の形を作って二人で前橋に向かって撃つ。
 「は?」目を点にしてる前橋を余所に俺とヨウは同時に吹き出した。


「兄貴、息合い過ぎだって俺達」

「ほんとマジ、やべぇって」


 このゲーム、はまるかもしんねぇ。

 そう笑うヨウは俺の肩を叩いてトンズラするぞって声を掛けてくる。笑いながら頷く俺は、ヨウの後に続いて急いでその場から逃げた。ワタルさんやハジメから舎兄弟最高って笑われたのは、体育館裏まで逃げてからのこと。
 勿論その後、各担任から個別に呼び出しを食らってお小言をもらったのは言うまでもない。たっぷりしぼられました。トホホな気持ちになったのは、多分不良じゃない俺だけだろう。他の皆はケロッとしてたし。


 だけどこれに懲りず、暫く、俺達の間でこの条件&罰付きジャンケンゲームがブームになった。
 昼休みやゲーセンで集まってはジャンケンして罰ゲームをしたり、それに笑ったり、まあ、それなりに楽しんだ。ちょいちょい困った罰ゲームをさせられたけどな!

 それとアレ以来、俺はヨウに罰ゲームであろうとも悪戯はしないって誓った。
 だってヨウ、悪戯されるの嫌いって分かっちまったんだもん! あんな痛い拳骨貰ったんだし、もうぜぇえってしねぇ!

 あ、最後に。
 俺と同じくヨウに悪戯をしなきゃいけなかったモトは、散々悩みに悩んで思いっ切り振ったコーラをヨウに差し出してた。


 しかも、


「これ、めっちゃ振ってあるんで開ける時は注意して下さい! 開ける時は慎重に!
あぁあああっ、やっぱり、ヨウさん、これはオレが開けますッ。ヨウさんをコーラまみれにさせるわけにはぁあああ! でも罰ゲームッ…あああああああっ、いっそ地獄に落として下さい。ヨウさん。ヨウさーん!」


 と、言ってヨウを困らされていたという。
 最終的にモト自身がその場で開けて、傍にいたヨウと一緒にコーラまみれになって怒られていた。振ってること言っちゃ悪戯も何もないだろうに、なんて思ったのは俺だけの秘密だ。


 ま、教訓として言えるのは、『ヨウは悪戯し掛けるのが好きだけど、されるのは嫌い』だな。


 とにもかくにも二度と、ヨウに悪戯するもんか! 命が幾つあってもたりゃしねぇよ!
 
 

 Fin.
 




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