ドッキューン!
「よ、ヨウさん、あのー」
「俺が望むなら喜んで身を捧げてくれるなんだろ? 最高の殺し文句じゃねえか」
な、なんだこの展開、なんで甘いアマーイ空気が流れ…、ない、ないぞ、ヨウ。
イケメンに微笑まれようとも、俺、お前にはときめかないぞ。俺等の関係、大変別物になっちまうだろ!
「ちょ…!」慌てる俺に、「だーかーら」ヨウは次の瞬間、くっきりと血管の浮かんだ握り拳を見せ付けてくる。怒りオーラ全開の拳に俺はたじろいだ。
ま、まさかヨウ、俺の思ってる以上に怒っちゃってー…たり?
「こーんな俺に身を捧げてくれる弟分のために、この拳に気持ちを籠めてやるッ…。ケイ! テメェ、よくも俺に恥じ掻かせてくれやがったな! 俺の納得がいくまで説明しやがれえええ!」
ゴンッ―!
俺の脳天に拳が落ち、「アイッデ−!」俺の悲鳴が上がったのはその直後のこと。
油断アンド身構えてなかったせいでヨウの拳骨が数倍痛く感じたのだった。こ、こんなことなら回りくどくしないで素直に拳くれた方が良かったって思ったけど、憤っているヨウには何も言えなかった。
俺達のやり取りを見てまた大爆笑していたハジメとワタルさんがいたのは、余談にしておく。
◇
「―――…条件と罰付きジャンケンゲーム? 何だよそれ、俺も呼べって。俺もやりたかったっつーの」
静かになった第一視聴覚室。
俺等の説明・事情を聴いたヨウはブツクサブツクサと文句を垂れてた。自分だけ除け者にされたことが腹立たしいらしい。イケた面が不貞腐れてる。俺的にはお前、超ラッキーだって思うぞ。参加者は散々な目に遭ったしさ。
「ごめーんって」ワタルさんが拗ねているヨウに謝っている。
だけどヨウはヘソを曲げたまんま。
まあ…、ヨウって、こういう楽しいゲーム好きだしな。
除け者にされた上に標的にされて機嫌を損ねてるんだろうけど、俺がヨウの立場だったら万々歳なんだけどなー。
「ケイには舐められるわ、クラスメートから笑われるわ、除け者にされるわ、…散々だ」
「な、舐めてはないって。俺も必死だったんだぞ」
「あんなノリノリで言う馬鹿がどこにいるんだよ」
「あー…俺、乗せられやすいタイプだから」
俺はヨウに殴られた頭部を擦りながら、言葉を返す。
嘘は言ってないぜ? 俺、これでも必死だったし…、だけど何か吹っ切れたように乗せられちまったし。
「けど途中、調子こいてたよな?」
ギロッとヨウに睨まれて俺は誤魔化し笑い。
ま、まあ…調子こいた自覚もあるし、俺に非があるかも…、うん、調子こいてました。すみませんです。
「よーし、今日の放課後、ゲーセンでもっかいやろっか! 僕ちゃーん、このゲームにハマっちゃった! 何たって、このゲームでシズちゃーんが、響子ちゃーんの張り手食らう面白い光景が見られたりしたんだしねねねねんん! ケイちゃーんと僕ちゃーん、ベッドインしちゃったしねーん?」
「ゲッ…、マジかよ。テメェ等。ないぜ、それ」
イカガワシイ目つきで俺とワタルさんを見てくる舎兄。
一応弁解するけど、ベッドインの意味違うからな! ヨウ、ゼンッゼン違うからな! プリッツゲームをしただけなんだからな! しかも俺が途中リタイアしたんだからな!
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