013
……ヨウは恐いけどさ、俺的にもっと恐いのはワタルさんなんだよね。
比べた時、どっちが痛い目見るかを考えると、やっぱ此処は命捨てるしかねぇよな! さらば、田山圭太!
俺はフッと笑って、急いで黒板台に立った。
もう、どーにでもなれってんだ! 不良なんか恐くないぞ! イケメン舎兄なんてッ…、恐くないぞー!
「ではリクエストに応えて。俺の舎兄への想いを此処で告白させて頂きます」
俺、田山圭太は兄貴のために、常日頃から兄貴の愛と正義と平和を守るのでありまする!
田山圭太は貴方のために、この身を捧げる気持ちで尽くしましょう! ウッフン兄貴、舎弟の友愛を感じてくんなまし。俺、兄貴を尊敬してるのでありまする。
ポッ…、照れちゃいまする。ヤダ、俺、おにゃのこじゃないのに兄貴にときめまする!
「そんな兄貴に、俺、一生ついていきますッ…わぁあああ、ヨウ兄貴ぃ、怒ってるお顔も惚れるでありまする」
うわぁああ、ワタルさんの手を振り切ってヨウがこっちに来ちまった! ヨウに胸倉掴まれちまったよぉ!
恐い、怖い、KOWAI!
「ケーイー、そんなに俺のこと愛してくれてるなんてなー。で、この落とし前、どうつけるつもりだ?」
にこやかに、でも、ちっとも目が笑っていないヨウに俺は千行の汗を流す。
「てへっ」俺は自分の両頬を人差し指でさした。
「アーニキが望むなら、喜んで身を差し出しましょう。でもヤサしくシ・テ・ね。まあ、ケイちゃん大胆、恥ずかしい」
「………」
後ろから盛大な爆笑が聞こえた。
「サイッコウ!」ハジメは呼吸困難になりながらヒィヒィ笑ってるし、「さっすが!」ワタルさんは笑い過ぎて目尻に涙が溜まってる。
フッ、俺はやった、やり切ったよ。
目の前の不良に殺される覚悟で言ってやったぜ。もう後は天誅が下されるのを待つしかないよな。第一視聴覚室に笑声が充満する中、ヨウがふーっと息を吐いてきた。
おぉお…、ついにくるか、天誅!
「そうか、弟分がそーんなに思ってくれるなら俺も応えねぇとな。ヤサしくシてやるよ」
「へ?」
もしかして許してくれる…系か?
そ、そうだったら俺、お前を見直す! 寛大な兄貴って賞賛するぜ!
「女は数多くあったけど、男に求愛されるなんざ初めてだ。が、まあ、ケイならいっかって気分だ。舎弟だしな」
………。
ちょ、何言ってくれちゃってるの、ヨウ! 求愛? はあ?!
俺、の、ノーマルだぜ?! 今のはノリで言っただけで求愛って、ちょ、おまっ!
「よ、ヨウ? 別に俺、そういう意味で言ったわけじゃ」
「いや、俺、男は初めてだから戸惑うこともたくさんあるけど、まあ…ケイなら……、あ、可愛く見えてきた。やべぇな、惚れちまったんだぜ」
「じょ、じょーだん…」
サブイぞ。
ヨウ、俺、お前がイケメンだとしても、それは寒い。寒いぞ。
「冗談じゃないってケイ。俺が冗談言う人間に見えるか? 舎兄弟とは別の関係、作ってやろうじゃねえか」
イケメンは俺に笑顔を向けた。
ンマー、イケメンってほんと笑顔も爽やかなのね、思わず俺、ときめいちゃ…うわけないだろ!
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