012
適当にセロハンテープを教室にいた生徒に借りて、俺達はヨウの通学鞄にそれを張り付けた。
背中に張らなかったのは、本人が気付かなかった場合があるからだ。んでもって気付いた時の怒りは多分、通学鞄にはっ付けられたよりも大きいだろうから、身の安全を考えて通学鞄に張り付けた。
呼び鈴が鳴ると同時、俺等は自分の教室に逃げ込む。
後はヨウが俺達の教室に押し掛けるのを待つだけだ。それまで、俺、超心臓が高鳴ってた。授業どころじゃなかった。
「ま、ヨウにノリ良くごめんちゃい的な台詞を考えとくんだね。ケイ」
まんま他人事のように笑うハジメを恨めしく思いながら、俺はヤケクソに憤って押しかけるだろうヨウに向ける台詞を考えた。
―――…そして見事、俺はヨウにキレられ追い駆けられる羽目になったとさ。ちゃんちゃん、おしまい。
アリエネェ…、ヨウに散々追い駆け回されるとか。
俺はぐったりと机に伏せてダれた。あの台詞は調子こいたかなー…、けどあれくらいのヤケクソ魂がないとやってらんなかったんだって。どうせ殺される運命を辿るのなら、とことん笑いを取ってやろうじゃないかって思ったわけだ!
……俺、マジで殺されるんじゃね。
「あーあ、僕ちゃーんもケイちゃーんのノリノリな悪戯見たかったなぁ」
心底残念がっているワタルさんに、「悪戯より台詞が最高だって」ハジメは俺を見ては大爆笑。腹を抱えてヒィヒィ笑う。
くそう、いいよな、ただの傍観者はさ。俺も気兼ねなくヒィヒィ笑いたいよ。
大体、ワタルさんが条件&罰付きジャンケンゲームなんて思い付くから、俺、こんな目に遭うんだよ。少しだけ調子に乗った俺も悪いとは思うけどさ。
遅かれ早かれ、俺、ヨウに見つかってしごかれるに違いない。
どうしよう、今、此処で第一視聴覚室のドアが勢い開いて、
―――バンッ!
「ケイ、此処にいやがったか!」
わぁーお…、どんぴしゃ。
俺はぎこちなく扉の方を見た。舎兄の形相に冷汗&引き攣り笑い。
次の瞬間、俺は椅子を倒して逃げ出した。「待ちやがれ!」ヨウが俺を追い駆け回し始める。そんなヨウを引き止めてくれたのは意外にもワタルさん。助けてくれるのか、なんて思った直後、ワタルさんは俺に極刑を下した。
「ケイちゃーん。ヨウちゃーんを押さえてるから、もーっかい見せて! ケイちゃーんが言ったノリノリな台詞! 罰ゲームもういっちょいってみよー!」
はあ?!
何言ってるの、この人!
「僕もリクエストしたいなー。悪戯より、ケイがヨウに言った台詞の方が断然爆笑だしさ」
は、ハジメ…お前まで。
そんなに俺を殺したいのか!
「は? 罰ゲーム?」
憤ってるヨウが何だそれって顔をしてる最中、二人は俺にしろよオーラを醸し出す。
ううっ…、俺はどうすれば…、不良二人を敵に回し、ヨウに今すぐ謝って罰ゲームのことを暴露するか。それとも不良二人のご要望に応えて、ヨウの怒りを煽るか。
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