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010


 
 なーんて懇願する俺の気持ちを余所に罰付きジャンケンゲームは再開される。
 
 たかだかジャンケン如きに、こんなにも緊張したことはない。
 専門委員とかの係り決めジャンケン以上に心臓がバクバク鳴っている。ジャンケンで負けて学級委員になるより、ジャンケンに負けて罰ゲームを受ける方が苦痛の苦痛だ!
 人数が増えただけ、自分が罰ゲームを受ける確率が減るからいいけどさ。
 
「よーし、人数増えたし、罰ゲームは二人にしよんこしよんこ!」

 わ、わ、ワタルさんのバカヤロー!
 

「じゃあ罰ゲームは、『負けた二人でポッキーゲーム』なんてどーだ。うち、此処にポッキーじゃないけどプリッツ鞄に入れてるから」

「それで決まりぴょーん!」


 きょ、響子さんもバカヤローだ!

 ポッキーゲームって言ったら二人で向かい合って、1本のポッキーの端を互いに食べ進んで、先に口を離したほうが負けってアレだろアレ! お互いが口を離さずに食べきった場合、チューしちまうアレじゃないかー!
 この場合、プリッツゲームなんだろうけど、このメンバー、野郎率が多いじゃんかよー!
 おぇ、もしかして俺、男と初ちゅーする羽目になるかもしれないってこと? …ない、マジでないって! ま、ちゅーする前に俺からリタイアするけどな!
  
 嗚呼、神様仏様天使様女神様閻魔様! 
 

 どうか、どうか、ポッキーゲームだけは!

 あ、ちげぇや。プリッツゲームだけは当たりませんように!

 
 「ジャーンケーン」誰かの合図と共に、皆が手を出す。
 顔がやや引き攣ってるのは、誰もがやりたくない罰ゲームだからだ。じゃあやめろって話だよな! な!
 
 掛け声と共にジャンケン開始。
 何度かのジャンケンの後、結果……。


「……、俺の阿呆」
 

 チョキで負けた俺。

 フッ、俺、田山圭太はつくづく運のない男らしい。
 地味男で異性との付き合いがろくにもないにも拘らず、こうやって誰かとポッキーゲームだなんて。なんで、こんなことに…、俺って運ねぇ。
 
 えーっと俺と一緒に負けた人って…、なーんか野郎な気がしてならないんだけど。
 ぎこちなーく視線を投げやれば、わぁお、やっぱり野郎だったという。しかもお相手は。
 

「ヤーサシくしてチョンマゲ」


 ウィンクしてくるワタルさんに俺は心中号泣。
 おいおいおい、神様仏様天使様女神様閻魔様、俺に何か恨みでもあるのか? 俺、あんた達に何かしました?
 
 「おらよ」響子さんが楽しげにプリッツの入った箱を投げ渡してくる。
 キャッチしたワタルさんはすっげぇ楽しそうにプリッツを銜えてきた。

   
「ケーイちゃーん、カモーンベッドイン!」

「や、やな表現しないで下さいよ!」


 てか…。

 うぇー、俺も銜えるの? ヤダぜ、マジで! ワタルさんなら、本気できそうだもん!
 だけどココロがあんな罰ゲームをやった手前、俺がしないわけにもいかない。俺はプリッツの端を銜えた。嗚呼、死にたい。
 
 この後、俺とワタルさんは端からプリッツを食べ始め、半分来たところで俺がダウンしたという。
 もうちょっと踏ん張れってワタルさんに指摘されたけどさ、当の本人が食べてる途中で、
 

「一気にベッドインしようかなんぽー」

「へっ?」

「ケイちゃーんの初でしょー? じゃあ、イタダキマース」


 なーんて言ったんだぜ?!
 
 ちょ、本気で焦った! 危うく俺は男とやーな思い出を作るところだった! 
 実際、俺、中学時代にポッキーゲームをしてる男子群を見つけたんだけど、ポッキーを食べてしまい男同士で「……」なところを見た時は、言葉を失ったぜ! 傍から見て美しい光景だなんて、お世辞でも言えねぇって!
  
 プリッツゲームを終えた俺の顔色は青褪めてたという…。
 さすがにヨウ信者であり舎弟を認めてねぇモトでも、俺の不運に同情してくれて「どんまい」って声を掛けてくれた。あいつの優しさだと思う。それだけ、俺、青褪めてたんだと思う。




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あきゅろす。
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