臨時休業
人気のない路地裏と空き地を抜けた先に大きな森が迎えてくれる。
そして大きな森の出入り口付近には、小さな小さな二階建の店が静かに建っている。その店の名前は“何でも屋”。些細な依頼さえも、引き受けてくれる一風変わったお店だ。此処の店員もまた一風変わっている。
一風変わったお店とその店員のところへ訪れようとしていたのは、今年高校に入学したあかりだった。
部活帰りに迷うことなく此処を訪れる彼女は、今日もお店に足を運んでいた。
「お腹減ったなぁ。菜月くんになんか作ってもらおうっと」
図々しいことを考えながら、あかりは“何でも屋”に颯爽と向かう。
“何でも屋”の近くまで来た時、お店の出入り口付近で友人と会った。
吸血鬼のネイリーとセントエルフのジェラールだ。彼等もお店に遊びに来たらしい。あかりが2人に駆け寄り、声を掛ける。
「こんにちは。ネイリーさん。ジェラールさん」
「あら、グーテン・ターク。あかり」
「グーテン・ターク。あかりくんも遊びに来たのかい?」
「はい! って、あれ? お二人とも、中に入らないんですか?」
あかりが首を捻って2人に訊ねる。
するとジェラールが困ったような顔を浮かべて扉を指差した。あかりが扉の方を見れば、扉に張り紙が張ってあった。
【臨時休業のお知らせ】
何でも屋は、
本日金曜日〜来週の日曜日まで臨時休業とさせて頂きます。
ご依頼予定の方は、水曜日以降に再度ご来店をお願い申し上げます。
足を運んで下さった皆様には大変ご迷惑をお掛け致します。
何でも屋店員 鬼夜・林道
「り、臨時休業〜〜〜?!」
達筆な文字で書かれている張り紙の内容を読んで、あかりは素っ頓狂な声を上げた。昨日は、そんなこと、全く言ってなかったではないか。
折角遊びに来たのに、とガックシ肩を落とすあかりにネイリーが微苦笑した。
「店内に気配が感じられないようだから、二人とも出掛けているようなんだ」
「緊急な依頼でも入ったのかしらぁ? それとも旅行かしらぁ?」
「うーっ、折角遊びに来たのに……私、お腹減ってるのにぃー!」
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