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006


 

「はいはい、ごめんなさい。髪も問題だけど、菜月に聖界の日用品の使い方を教えてあげなきゃ。
これじゃあその内、菜月、怪我しちゃうわ。私だって安心して出勤も出来ないし。だけどさすがに毎日交互に菜月を看てあげられるほど、仕事も暇じゃないし。でもね、こんな状態じゃちょっと…」


「いっそ菜月を職場に連れて行くってのでもいいけどな。けど異例子だから目立つだろうし…、でも菜月が留守番なんて無理じゃねーか? あぶねぇだろ!」
   
「だけど菜月には家事をさせるって決めたでしょ」

「何それ。俺が家事?」
 

 目を削ぐ菜月は冗談じゃないと却下を申し出た。
 柚蘭と螺月は身を拘束され何も出来ない菜月のために家事をして欲しいと思っているのだが、当の本人は冗談じゃないと吐き捨て却下をした。何が悲しくて兄姉のために家事をこなさなければならないのか、菜月は嫌でいやで堪らないと態度で示す。

 「何もしねぇよりマシだろ」螺月が努めて優しく言うが、菜月はうぇーっと舌を出すだけ。

 これにはカッチンくる。
 下手に出ればつけやがってっ、螺月は菜月の両頬を抓り、「兄貴になんだその態度」思い切り引っ張ってやった。兄貴面するなと痛みに耐えながら生意気な態度を取るものだから、螺月はこめかみに青筋を二本立てる羽目になる。


「こんの阿呆がッ、いいから大人しく言うこと聞きやがれ!」

「やーひゃ(ヤーダ!)!」


 絶対にするものかとそっぽ向く菜月の強情さには螺月も根負けである。
 どうしてもしたくないという弟をこうも無理強いするのは可哀想かもしれない。徐々に生活に慣れてからしてもらうか、そんなことを思っていると柚蘭がニッコリと笑顔を菜月に向け静かに言う。


「菜月。このままだと貴方は人間界用語で指す“ニート”よ。いいのかしら?」


 グサッ。
 菜月は心に大きなダメージを受けた。

 人間界用語“ニート”。 
 意味、仕事に就いていない、家事も通学もしていない人を指す
 言われてみれば確かに自分はそれに当てはまるけれど。何故に姉がその用語を知っているのか謎だけれど。当の菜月としては指されたくない部分だった。しかも結構グサッとくる一言だった。努めて表には出さなかったが、結構心に受けたダメージは大きかった。


「わ、分かったよ。やればいいんだろ、やれば」

「やってくれる? いい子ね」


 ショックのあまり、ふるふると体を震わせている菜月に螺月は同情する他なかった。

(柚蘭、笑顔で人の急所ついてくるからな…)

 まあ姉を敵に回した菜月も悪いと思うが、今のは同情してしまう。


 こうして菜月はニートという脅しという名の手法で家事をさせられてしまうのだった。
 



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