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016



 
 天井を見つめていると、自分の身体に毛布が掛けられる。
 驚いて隣に視線を向ければ、とても眠たそうな顔をしている執事が欠伸を噛み締めていた。

「ベッドに潜り込むのは構いませんが、毛布は被って下さい。風邪ひきます」
「起きてたのー?」
「起こされたんです。今日は此処で眠るおつもりですか?」
「実は夜這いしに来たのぉ。嬉しい?」

「嬉しいって。全く…勝手に人のベッドに潜り込んで…、俺、眠いのですが」
「嬉しくないのー?」
「俺の疲れてない時にお願いしますよ。そういうことは」


「うーんザンネーン、ま、今日は勘弁してあげる。で、本当のところを言うと教育係のババアから逃げてきたから、此処で寝かせて」

「あーもう。だったら尚更、毛布を被って下さいよ。此処で風邪をひかれたら俺のせいになりますので」


 ブツブツ文句を垂れ、重たそうな瞼を閉じる執事。相当眠いのだろう。
 そういう風に眠そうな顔をされると起こしてやりたくなるのがサガ。
 だが今日のところは勘弁してやろう。眠たそうと同時に辛そうだから。日頃の疲労が溜まりに溜まって、睡魔として襲い掛かってきているようだし。

 執事の眠たそうな顔に可笑しさを感じていると、執事はこんなことを言ってきた。


「俺はお嬢様の執事です。なので、何があってもお嬢様を選ばせて頂きます」


 それだけ言うと執事は夢の世界に旅立った。
 先程の返答なのだろう。残されたいばらは笑声を上げた。



「さーすが。あーたしの執事。分かってるジャーン」

 
 
 いばらは笑いながら目を閉じた。
 
 
 
 明日も執事は自分の言葉にこういうだろう。「仰せのままに」と。
 そんな執事に明日はなんて言ってやろう。嗚呼、そうだ。明日は隣町の令息と交流か。
 だったら早めに話を打ち切って部屋を飛び出してやらないと。執事もそれを望んでいたし、きっと飛び出せばあだっぽい笑みを作って喜ぶだろう。

 自分に感化された執事は、今、本当に独占欲が強くと嫉妬深い。

 そんな執事は自分をズルイと言ってくるが、執事だって十二分にズルイ人だ。
 


「昔から笑顔で束縛してくるんだもんねー」



 これをズルイ人と言わず、なんと言う。
 
 

 End


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あきゅろす。
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