005
「ウ、ウム。しかしだね、赤ん坊を抱くなんて何年も無かったから…力の加減が」
「是非、この子はネイリーさんに抱いてもらいたいんです」
大丈夫だからと笑うみずほに負け、ネイリーが赤ん坊を受け取る。
途端に赤ん坊が泣き始める。
あたふたとネイリーが慌て始めた。抱き方が悪いようだ。
クスリと笑ってみずほが、抱き方をネイリーに教えている。かなり困り果てているネイリーの姿はレアものだ。やっと泣き止み始めた赤ん坊にネイリーがホッとして、赤ん坊の顔を覗き込む。
可愛らしいなと笑うネイリーは赤ん坊に男の子か女の子か訊ねた。
この赤ん坊は女の子らしい。
名前は“日和(ひより)ちゃん”。
可愛らしい名前だとまたネイリーがみずほに笑う。
スッカリ蚊帳の外にいる2人は、先程考えていた“ネイリー女性に手を出していました説”は無いなと思った。
忘れ去られていた2人に気付き、みずほが「すみません」と謝罪してくる。
菜月が気にしなくてイイとばかりに笑う。
「俺達、お邪魔でしょう? ネイリーさんとお話しすることあるでしょうし、此処をお貸ししますので」
「いえ。ネイリーさんと少し行きたい場所があるので」
「そっかぁ。んじゃ、ネイリー。行って来いよ! この色男め!」
「うわっつ!」
風花が背中を思い切り叩く。
日和を抱いていたネイリーは、風花に背中を思い切り叩かれせいで、ウッカリと日和を腕から滑らせてしまう。
「なッ!」
「ウッソー!」
「ええええ?!」
菜月と風花はギャー!と叫んでそれぞれ日和をキャッチする態勢を取った。
その前にネイリーが素早く日和をキャッチした為、難を逃れた。
良かったと脱力する3人。
みずほがクスクスと笑い、日和がキャッキャッとはしゃいでいる。
いや、笑い事じゃないだろ。今の出来事。それにみずほ。今のところは焦るところだ。我が子の危機だったのだから。ここは笑うところじゃない。
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