018
風花と菜月に衝撃が走った。
毎月、毎月ダンボール3箱に悩まされていた油揚げが、さらに2箱分追加される?! 固まる2人に「足りないならもっと」なんて伊綱が物騒なことを口にするものだから、2人は充分だと焦った。
さらに坤がこんな一言を。
「昨日、ダンボール5箱分の油揚げを送らせてもらった。きっと家に着く頃には届いてると思う。楽しみにして欲しい」
家に帰ったら、ダンボール5箱分の油揚げが待っている。
切実に2人は思った。
家に帰りたくない、と。
しかし、稲荷家のご好意を無駄にすることも出来ない為、
「お、おお。そーなのっ。それは楽しみだな。あははははっ」
「じゃ、じゃあ。家に帰ったら、早速お稲荷さんを作ろうかな。あははははっ」
嬉しいなとばかりに2人は笑った。
もう笑うしかなかった。笑いしか出てこなかった。
笑う2人に追い討ちをかけるように、子供達が「お土産!」と葉で包んである稲荷寿司を渡してくる。
「おいらたちがつくったの〜! かえりにたべてね!」
「おれ、いっしょーけんめーつくったんだ!」
「あじみしたから、おあじはイイよ」
「ありがとっ、も、ほんと……良くして貰ってさっ。悪いね」
「感謝の言葉もないよっ」
どうやら、今この瞬間から油揚げ地獄は始まったようだ。
笑いながら2人はお土産を遠目で見つめる。
子供達が一生懸命作ってくれた稲荷寿司。食べないわけにはいかない。
バス停まで見送りに来てくれた稲荷家と別れた後、2人は早速バスの中で子供達が作ってくれた稲荷寿司を食べた。
子供達が作ってくれたということもあるが、今回の出来事を話していた為か、2人はあっという間にお土産の稲荷寿司を平らげてしまった。
稲荷寿司は手作りで優しい味がしていね、と後々2人は語っていた。
End
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