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002



 
「そこに座って下さい」

「はい」

 頷いて女性が椅子に腰掛ける。椅子に腰掛ける女性と向かい合うように風花も座る。
 風花の目に映ったのは、女性の腕に抱かれている赤ん坊。

 母親の顔を見つめていた赤ん坊が、ふと視線を風花に向ける。


 途端に「だぁ」とニッコリ笑ってきた。

 風花は可愛いッ! と小さく手を振る。


 女性がクスリと笑った。
 風花はハッとして咳払いをすると、自己紹介をして名前を訊ねる。女性の名前は羽柴みずほと名乗った。

「みずほさんか。それで、えーっと、えーっとですね」
「みずほで良いですよ。それに敬語を使わなくてイイのに。風花さん」

 クスリと笑うみずほに、風花は頬を掻いた。

「そう? ンじゃ遠慮なく。みずほの依頼って何?」
「人を捜して欲しいんです」
「人?」
 

 そこまで話した時、菜月が応接室に入って来た。


 みずほに淹れたての紅茶を差し出すと席に着き、自己紹介をした。
 みずほもまた自分の自己紹介をする。そして依頼内容を再度口にした。



 人を捜して欲しい、と。



「人捜しですか。時と場合によって受付できるかどうか。日本にいますか? その人」
「さあ。分からないんです。でも、どうしてもその人に会いたくて」
「一言に人捜しって言っても難しいからな。どんな奴? 特徴とか名前とか知ってる?」
「ええ、名前だけなら」
 
 風花と菜月は紅茶を啜りながらみずほの方を見る。

 赤ん坊が「だどぅー」と言葉とも言えない言葉を発している。
 腕の中で手をジタバタ動かしている様子を見下ろしながら、みずほが「名前だけなら知っているんです」と繰り返した。



「お名前。ネイリー・クリユンフさんというんです」

 
 
 刹那、風花と菜月が紅茶を思い切り吹き出した。
 店員2人の粗相にみずほが目を丸くする中、2人は仲良く噎せ返り、暫く苦しい思いをする羽目になった。





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あきゅろす。
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