014
不意打ちを喰らった坤はイタチの次に繰り出してくる攻撃を察知し、地を蹴って起き上がり辛うじて避けることに成功する。遠くから子供達の声が聞こえた。
耳を傾ければ、自分を応援してくれる声だと分かった。息子達が応援していてくれるのだ。坤は絶対に負けるわけにはいかないと唸り声を上げ、大きく大きく遠吠えをする。
するとイタチと対立している坤の尾が、四つから五つに分かれ始める。
妖力が上がり、強さが一段上がったといってイイだろう。
地を這うような唸り声を上げ、尾を揺らしながら、坤は狐火を吐きイタチに喰らわせる。
思わぬ攻撃にイタチがヨロめいた。
隙を突いて、坤は先程よりも強い狐火をイタチに喰らわせる。
青い炎はイタチの身を包み込む。
イタチは声さえ上げられないまま、瞬時も燃え消えてしまった。
その光景だけは子供達に見せないよう風花が子供達の視界を覆うように抱きしめる。
子供達は、いきなり視界が真っ暗になった上、視界が晴れた時にはイタチが消えてしまっていたことに首を傾げていた。
そんな子供達に風花は「イタチは逃げたんだよ」と笑いかけ、頭を撫でた。
坤が終わったとばかりにフッと力を抜くと、颯爽と風花達の方にやって来た。
息子達に駆け寄り、無事を確認する。
『怪我、ないか?』
途端に子供達が、泣きそうな顔をした。
安堵したのだろう。上擦った声で自分は無事だと主張する。
「とーちゃ……ないよぉ。おれ、ないよぉっ……っ、ないよぉ」
「おいらもっ」
「っ、ぼくもっ……っ。でもぉ、とーちゃっ、けがぁ」
坤はイタチとの戦いで怪我を負った。
痛々しい傷が子供達の目に飛び込み、本格的に泣き出しそうな顔をする。怪我を気にする子供達に、坤は笑い「大丈夫だ」と子供達の頬を舐めた。
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